農業で働く女性を応援するため、農林水産省が進めている活動がある。名前は「農業女子プロジェクト」。農政ではめずらしく補助金がゼロなのに、計画に参加した自動車メーカーが、女性農家の声をすいあげて軽トラックを発売するなど、つぎつぎに成果を生んでいる。仕掛け人は、博報堂から出向していた勝又多喜子さん。彼女を支えたのは、民間ならではの柔軟な発想だ。2年間の出向期間を終え、10月に出向元に戻ったのを機に、プロジェクトの経緯について聞いた。
女子の力を結び、自信につなげる
なぜ、プロジェクトを立ち上げようと思ったのですか。
「農水省に出向し、いろんな農業女子と知り合い、彼女たちが作物をつくること以外に、生活者として多くの知恵を持っていることに気づきました。彼女たちはネットワークもたくさん持っています。でも、それが『いろんなことをやっている』という段階にとどまっていて、どうしても内向きになりがちなのです」
「広告会社に勤めているので、企業の力が圧倒的に大きいということは知っています。そこで、彼女たちの知恵と企業の技術やノウハウを結びつけることで、彼女たちのことをもっと知ってもらおうと思ったのです」
もっとも大きな成果はなんでしょう。
「このプロジェクトが、新しい製品の開発に結びついたということはあります。こうやって農業をやっている女性たちがいることを世の中に知ってもらい、『なんだ、農業の世界って明るくてかわいいんじゃないか』と思ってもらえたことも成果だと思います」
「でも、もっと大きいのは、彼女たちが全国の農業者や企業など、いままで会ったことのない人たちと知り合い、新しいものをつくろうと真剣に取り組んだことで、なにか新しい気づきがあったことです。自信を持っていろんなことに挑戦してくれたと思います」