柳谷政人 柳谷政人
2014年10月24日01時30分
2005年の宝塚線(福知山線)脱線事故後にJR西日本が設置した安全研究所(大阪市阿倍野区)の研究成果が、実際の車両に生かされ始めた。「人間にミスは起きる」を前提に、ヒューマンファクター(人的要因)に特化した研究を始めて8年余り。今月からは当時の事故担当だった元官僚を所長に招き、さらなる安全性の向上を目指す。
来春から広島地区を走る新しい近郊型電車「227系」。運転台には液晶画面が二つある。速度計や圧力計などが表示されるが、安全研究所が大きさや配置を決めた。現役運転士の協力を得て研究した成果だ。
運転士の視線の動きを検証したところ、車外と速度計を見るのが大半で、電流計や圧力計はあまり見ないことがわかった。タブレット端末を段ボールにはめた模擬運転台を試作し、様々な大きさや配置、配色の計器表示から、運転士が見やすいものを選んだという。
4月からは、新幹線の保守用車両190台に新しい運転支援装置を導入し始めた。ポイントは「音」だ。車両同士が接近すると音を鳴らして注意を呼びかけるが、これまでの装置は音が小さく、聞きづらかった。しかし、音が大きすぎると運転士は不快に感じる。10年には運転席のスピーカーにテープを張るなどの不祥事も起きた。
走行中の騒音の録音を流しながら、運転士に様々な報知音や音声を聞かせたところ、注意喚起できる最適な報知音は73デシベル、音声は72デシベルだと分かった。新しい支援装置にはこのデータを反映。車両同士が近づいた最初のタイミングでは落ち着いて聞ける女性の声と「ピンポーン」という報知音を、危険が迫る場合は男性の声を流して注意を促す。操作画面も改良し、実験で運転士の反応スピードが最も速かったものにした。
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朝日新聞社会部
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