「中国人たちが留学先に日本を選ぶ理由はというと、アルバイトや仕事ができるからということが大きいと思います。欧米に留学となると4倍もの費用がかかりますし、当然アルバイトや仕事はできない。また、学力面も日本は欧米ほど問われません。『そこそこ頭がよければ何とかなる』と。多少の努力で、それなりの成績を収められるのが現状です」
日本に10年在住歴のある中国人女性のジャーナリストNさんは、日本に留学する中国人の事情をこう語る。
「奨学金は、そもそも日本での勉強を支援する名目で中国のエリートたちのために日本側が設けた制度です。日本に全面的に奨学金をもらってきている人たちについては、中国でのエリート層とはいえ、欧米に高い金額を払っていけない貧しい階層だという。しかし、中国も最近は裕福になっているので、留学生も正直なところ全面的な支援を必要ないと思っている人も少なくなくありません」
海外では3倍の授業料を払う留学生
2012年の時点で、日本の外国人留学生は137756人で、出身国上位5位は、中国、韓国、台湾、ベトナム、ネパールとなっている。中国人と韓国人だけで約76%を占めている。(独立行政法人日本学生支援機構)日本人が奨学金で大学に行く場合、社会に出て就職したら返済しなければならないが、外国人留学生は返済する必要がないという話をよく日本人研究生の友人から耳にする。『図表でみる教育 OECDインディケータ (2006年版)』を参考に世界各国の平均授業料を調べてみると、海外では外国人留学生が授業料をおよそ3倍高く払っていた。
例えば、オーストラリアは自国民の授業料が45.4万円に対し、留学生は129.9万円、カナダは35.6万円に対し、95.2万円、トルコは3.2万円に対し、10.4万円、イギリスは21.5万円に対し、169.3万円と実に留学生から7.87倍高い授業料を取っている。アメリカは55万円に対し、留学生には147.8万円と2.69倍だ。(03年~04年。為替レート120円で日本円に換算)
ところが、日本はどうだろうか。国立大学の場合、国費留学生の授業料はほぼ無料。修士課程、博士課程、 研究生といった大学院の外国人留学生には、月額15万円~15万3000円が支給され、教員研修留学生にも月額15万2000円が支給されている。また、学部学生、高等専門学校留学生、専修学校留学生には月額13万3000円、日本語学校生徒にまで月額12万5000円が支給されている。更には、渡航飛行機代(往復)まで出しているという。外国人の学費、生活費、飛行機代、語学習得費まで、日本の税金で賄われているという事実には驚いた。
07年で言えば、約12万人の留学生総数のうち、国費留学生は約1万人。残る私費留学生約11万人についても約1万2000人に対しては学習奨励費を支給しており、合わせると留学生全体の20%弱を支援している。給付総額は、国費留学生が223億円、私費留学生の学習奨励費は81億円で、合計300億円を超える(07年)。11年度の予算では293億円である。他にも、留学生の授業料に対し減免措置を設けている私立大学については、その一定金額を文科省が補助する仕組みもあるという。今後、政府は留学生を30万人まで増やす予定なので、さらに国庫負担が増えることになるだろう。