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【主張】
カナダ議会銃撃 テロの拡散に警戒強めよ
イスラム過激思想に染まった男が、カナダの首都オタワの戦没者慰霊碑を警護中の兵士1人を撃ち殺し、さらに連邦議会の議事堂で銃撃し、警官隊に射殺された。
イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」への空爆参加を承認した議会などを狙ったテロとみられる。
同組織掃討に直接、間接に加わる国々は危機意識を新たに、「内なるテロ」への警戒を強めなければならない。
容疑者は最近イスラム教に改宗したカナダ人で、当局は、この男がイラクとシリアで勢力を拡大させる「イスラム国」に合流する恐れがあるとして出国を阻止していた。カナダでは、この事件の2日前にも、東部モントリオール近郊の軍施設の近くで、カナダ人の男が兵士2人のうち1人を車でひき殺し、射殺されている。
この男も最近イスラム教に改宗し、ネット上で有志国連合によるイスラム国空爆を激しく非難していたという。
いずれのテロも、兵士や戦没者慰霊碑、連邦議会という、イスラム国に敵対するものを狙った点で共通している。
事件発生時、議事堂内にいて間一髪で避難した同国のハーパー首相は、「カナダはひるまず、テロ組織との戦いを倍加させる」と表明した。
テロは、市民の安全と社会秩序に対する深刻な脅威であり、決して許されない行為である。首相の決意を支持したい。
イスラム国に関連しては、今年5月、イスラム国の前身の過激派組織にシリアで参戦していたフランス人が、ベルギーのユダヤ博物館で4人を殺害した。
オーストラリアでは、イスラム国支援者らが市民を刃物で殺害するテロを企て、15人が逮捕・拘束される事件も起きている。
テロの拡散は、ネット社会を通じた情報のグローバル化によっても加速している。
日本でも、戦闘員としてイスラム国への参加を企てた26歳の北海道大学生(休学中)らが、警視庁公安部の事情聴取を受けた。
日本は有志国を支持し、人道支援を申し出ている。
イスラム国の残虐行為を逃れた避難民への支援が中心だが、テロの拡散を防ぐために国際的な協調体制を強化しつつ、国内の警戒も強める必要がある。