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英バーミンガム市でイスラムによる小中校“乗っ取り”疑惑 メッカ巡礼に公的資金など議論
【ロンドン=内藤泰朗】イスラム教国からの移民が多い英中部のバーミンガム市で、一部のイスラム教徒が過激なイスラム思想を広げるため、公立小中学校の“乗っ取り”に動いているとの疑惑が浮上し、議論となっている。英教育当局が調査した結果、同市内の21校中5校で「重大な問題」が確認され、これら小中学校への公的支援が打ち切られることになった。
疑惑は、過激思想の持ち主らが数に勝るイスラム教徒たちを利用して学校の指導層を変え、自分たちの関係者を教員などとして送り込み、学校で過激思想教育を実施させようとしているというもの。
英当局の調査機関が内部からの告発を受けて調査を実施し、今月9日、いくつかの学校でイスラム的な教育が行われている実態を公表した。男女差別を行ったり、イスラム教の聖地であるメッカ巡礼に公的資金を使ったりしていた学校の存在が明らかになった。調査責任者は「恐怖と脅迫の文化がはびこり、衝撃を受けた」と語った。
イスラム教国からの移民が多い英北部のブラッドフォードでも、同様の問題が持ち上がっていることが判明。英政権のゴーブ教育相は、9月の新学期から英国すべての小中学校で、「英国の価値観」を尊重した教育を行わなければならないとする通達を出した。
ただ、「英国の価値観」をめぐっては政権内外で早くも議論となっており、新たな政治的対立につながる懸念も出ている。嫌疑をかけられた一部の学校やイスラム教関係者は、調査が「政治的目的で行われたもので事実無根だ」と反発。宗教や文化をめぐる対立に発展しかねない懸念も出ている。来年の総選挙を控え、イスラムとの共存の問題が、争点のひとつに浮上する可能性もある。