可視化、司法取引導入へ 法制審議会答申

2014年09月19日 08時08分

 法制審議会(法相の諮問機関)は18日、警察と検察による取り調べの録音・録画(可視化)の義務付けや司法取引の導入、通信傍受の対象拡大を柱とした法改正要綱を全会一致で採択し、松島みどり法相に答申した。法務省は刑事訴訟法などの改正案を来年の通常国会に提出する方針。不適切な取り調べを防ぐための可視化がごく一部の事件に限られた一方、司法取引では虚偽の供述で他人を巻き込む危険性が指摘されており、刑事法学者らから「冤罪を防ぐ仕組みが不十分」との批判が出ている。

 要綱によると、警察と検察が逮捕した容疑者の取り調べを最初から最後まで可視化するよう義務付ける。対象は殺人や強盗致死などの裁判員裁判対象事件と、検察の特捜部や特別刑事部が扱う独自事件だけで、全事件の2~3%。目撃者などの参考人や在宅捜査の取り調べは含まれない。
 幅広い例外規定を設け、取調官が容疑者の言動から十分な供述を得られないと判断した場合や、暴力団事件などは対象外。付帯事項に「可能な限り幅広く可視化が運用されることを強く期待する」と明記した。
 司法取引は二つの類型が導入される。一つは、容疑者や被告が共犯者など他人の犯罪を解明するために供述したり証拠を提供したりすれば、検察が起訴の見送りや取り消しなどを合意できる制度。弁護人の同意が条件で、経済事件や薬物事件などに限定し、殺人などの重大事件は外した。
 もう一つは、公判で自分に不利益な証言をした証人の刑事責任を追及しないことができる制度。
 捜査で電話やメールを傍受できる対象犯罪に組織性が疑われる殺人や放火、強盗、詐欺、窃盗など9類型の犯罪を追加。NTTなど通信事業者の立ち会いも不要になる。
 そのほか、要綱には公判前整理手続きで検察官保管証拠の一覧表を被告側に交付することや、勾留された全容疑者に国選弁護人を付けることも盛り込まれた。