『女子の人間関係』著者・水島広子さんインタビュー(前編)
女の争いは「男社会」が原因! 『女子の人間関係』著者に聞く、女同士の“マウンティング”から抜け出す方法
女はめんどくさい。
すぐ「敵」「味方」を作るし、群れては陰口をたたき合って、男には「カワイイ女」を演じ、ここぞというときは同性の仲間を売り飛ばして自分だけ「イイ子」になろうとする。男性も女性もスタート地点において対等になるのが正しい社会のあり方だとは思うが、ついつい「だから女は……」と口にしたくもなる。
だがしかし、水島広子著『女子の人間関係』(サンクチュアリ出版)を一読すれば、男性は「他人事じゃない」と頬を張られた気分になるにちがいない。一方で女性は、「だから女は……」という言われ方にもやもやしていたものが一挙に晴れ渡り、はるか地平線の彼方まで見渡せるような、胸すく気持ちを味わえるだろう。
ここでは、この社会の中で生きてくために役立ちそうなことを、本書を軸に、著者の精神科医、水島広子さんにうかがってみた。
女同士でいがみあうイヤ~な「女」はどう形成されたか
その前に、ここでいう「女子の人間関係」が複雑化した前提について、まとめておこう。
●「女子の人間関係」がややこしくなったのは、男によって作られてきたこの社会のありかたのため。つまり、女性の社会的地位は、伝統的に男性に選ばれることで決まってきた。「よい男性、よい結婚に恵まれる」というやつだ。そうなると当然ながら、選ばれなかった人が必ず存在し、深く傷つくことになる。
●また、「女はこうあるべき」という外見の女らしさに自ら縛られ、他人にも「女の正論」で攻撃したくなる。
●つまり、女性の持つ「イヤな特徴」というのは、長年にわたって「選ばれる性」であったことで傷ついてきた人たちの「癒されていない心」そのものだ。それを、本書では“カッコつきの「女」”と呼ぶ。
●「女」によって感情を乱されたときにも、互いの中の「女」を静かに見つめ、癒してゆくことができたら理想的。
「女」度が低いとストレスは減り、人間関係の自由度も高まる
詳細は本を読んでいただくとして、人間関係は日々のものであり、一瞬のもの。頭ではわかっていても、「女」のおかげでムカっときた時に適切な反応をするためには、どういう心構えでいたら良いのだろうか。
水島広子さん(以下、水島):とにかく、「女」というのは傷ついた結果なんだと思うことが重要ですよね。そうすればムカっともこないし、「傷ついてかわいそうだな」という気持ちになれるんじゃないでしょうか。私の場合、あまりひどい人に出会うと、「いくら傷ついているからと言って、そこまでやるか〜」と思って笑っちゃいますけどね(笑)。
――職場で「女」度を下げるというのは、自分をキャラ立ちさせて、「この人はこういうことでいいんだ」という存在になっていくということでしょうか。
水島:みんながそれぞれ「ちょっと変わった人」になればいいんです。この本にも書きましたが、「ちょっと変わった人になる」には、「変わり者だと思われたくない」とか「誰からもよく思われたい」という気持ちを切り離せばいい。だから、「キャラ立ちさせる」というところまで強く意識しなくても、もうちょっと楽に実行できるんじゃないでしょうか。
――すべての女性が「女」度を下げていった先には、どんな社会が出現するのでしょう。
水島:それぞれが好きなことをやって、尊重し合って、滅多なことではお互いに干渉せずという社会なんじゃないでしょうか。個人のレベルでいえば、「女」度の低い人になるとストレスは減りますし、人間関係の自由度も高まります。だから、思い通りの人生を送っていくことができるようになります。
――女性と男性の関係も変わってきますね。
水島:そうでしょうね。男女関係のあり方にも個性が出てきますよね。たとえば、男女平等と言っても必ずしも「家事折半」になるとは限らない。ひとそれぞれの形で生きられて、それについて、ああだこうだいわない社会になるんだと思います。
女同士で敵対するのは、日本の中途半端な近代化が原因
――それに近い社会は、現在、どこかにありますか?
水島:いろいろありますよ。西欧社会は個がはっきりしているので、性別よりも個が大切にされることも多いです。一方でアジアに行くと、女同士の連帯が強いんです。女同士が助け合って生きている。日本だけがその中間にあって、女同士がイヤなことになっているんじゃないかと思います。
――それはなぜなんでしょう。
水島:きちんとした個人主義が成立しないままに、「個人主義風」のものが流れ込んできたということもあるでしょうね。戦後の清算がきちんと終わってないし、ドイツみたいに、根本から反省しなおしたということもないし。だから、日本は近代化したようで昔のままなんですよね。でも昔の良さだけはなくなっている。
ただし、日本の中でも地域性はあります。アジア的な女性の連帯が残っている地方もあるんです。たとえば私は、選挙で栃木に行ったんですね。そうしたら、いっぺんに女性を好きになりました。祭りなどでは男が前に出てくるんですが、裏では女性のネットワークが強固で、女性の「裏社会」があるんですよ(笑)。男は「表」で威張ってるんだけど、「裏社会」には手を出せない。
――女性の「裏社会」と聞くと、そこに属するとさぞかし息苦しいのではと考えてしまいますが、そうではないんですね。
水島:そんなことはないんです。所詮「裏」なので、表立って会合とかはしないんですよ。だから、「他人を差し置いてでも自分だけが目立ちたい」という動機がそもそも存在しないのです。いわゆる、保守的で男が強い地域は、大体女性の「裏社会」が確立されているんだと思います。「餅つき」っていうと、ついているのは男ばかりだけど、それ以外のことは全部女性がやってるっていうね。
――餅をつかせてあげているのは女っていうことですね。
水島:そもそも、女性の方が精神力が強いですよ。配偶者が亡くなると、男性はすぐに死んじゃいますよね。仕事で挫折するとすぐにポッキリ折れてうつ病になっちゃうし。女性はもうちょっと粘りますよ。それは女性のほうが、仕事をしながら子育てもして、地域の雑用もやったり、根を張っている場所が多いからだと思います。
>>>【後編に続く】女の集団を管理する極意は“裏社会”の活用! 『女子の人間関係』著者に聞く、社会の風通しを良くするコツ
(川本ケン)
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