中国が今週、発表した国内総生産(GDP)の数値は、歴史上最も偉大な経済成長の物語の終わりを示唆した。1980年から2009年にかけて、中国は平均で年率10.1%の成長を続け、世界で最も人口が多い国から世界第2位の経済大国に変貌した。だが、いまでは、中国政府の官僚らによれば、世界金融危機の後の四半期で最も低いGDP成長率を発表するに至った。私たちは、「新常態(ニューノーマル)」による中国経済の減速に備えるべきだ。だが、痛みを和らげるようなこうした言い回しは、揺らぎ始めた現実を覆い隠すだけだ。中国が脱却に取り組まなければならない債務のアリ地獄は、とても正常といえない。
■債務返済、インドのGDPに匹敵
格付け会社のフィッチ・レーティングスによると、中国の債務総額は金融危機後に実質的に2倍となった。GDPのおよそ240%にあたる。市場金利を平均7%とすれば、中国が債務返済にあてる負担は今年予測されるGDPの約17%にあたる1兆7000億ドルに達する。
要するに、中国の政府、公的機関、企業、個人を含む債務者は、インドの昨年のGDP(1兆8700億ドル)に匹敵する債務の返済を強いられるのだ。これは韓国(1兆3000億ドル)、メキシコ(1兆2600億ドル)、インドネシア(8700億ドル)のいずれのGDPも上回る規模だ。
中国にとってさらに深刻なのは、こうした債務が国内経済のダイナミズムに及ぼす麻薬のような影響だ。80年から09年にかけて中国が急成長した「キャッチアップ」の時期には、GDP比の債務返済負担率は、経済成長率を余裕で下回っていた。それがいまでは14年第3四半期の成長率である(前年同期比)7.3%の2倍を超える。これが何を意味するのかは明らかだ。中国の企業や個人は一段と債務返済に追われるようになり、投資や消費を手控えるようになる。1兆7000億ドルという債務返済の負担は14年1~9月に民間企業が工場や設備に投資した額に匹敵する。さらに、今年に入ってから建設や不動産購入にあてられた総投資額を上回っている。
■これからひと波乱も
借金による投資が支える経済にとって、債務返済がもたらす疲弊は致命的だ。経済成長率が昨年の7.7%から減速する一方、投資水準はGDP比で48%を維持している。中国が「投資に見合うだけの利益」を得ていないことは明らかだ。中国が減速する景気を下支えするため、債務負担を伴う様々な刺激策を打ち出すことはないだろうとみられている理由はここにある。金融危機への対応(中国政府が実施した公共投資を含む巨額の景気刺激策)はこうしたしっぺ返しにつながり、中国経済のダイナミズムを揺るがす借金疲れを悪化させるに違いない。
中国にとって厄介なのは、新たな景気刺激策にかわる対策を立てる場合も落とし穴が潜んでいることだ。フィッチは、仮に不動産の過剰供給を解消すれば、空室率はいまの約28%から08年の水準に低下する推測する。ところが、その場合の成長率は、多くの人たちが「ハードランディング」と呼ぶ4%前後に低下するとみられる。
中国にとっては、持続できない信用拡大と、資源輸出国の経済に打撃を与えるような内需の大きな落ち込みの間でバランスをとるような小手先の措置は必要ない。信用と生産能力の圧縮を伴って進める改革を続けることが、唯一の現実的な選択肢である。このほかの手段では、債務にどっぷりと漬かった持続できない体質がさらに悪化することになるだろう。中国経済の「新常態」にはひと波乱あると思った方がよいだろう。
(2014年10月23日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
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