「アベノミクス」にのって新規上場した「エナリス」、実態不明の会社に「巨額売掛金」、疑惑次々と
■原発事故の影響で雨後の竹の子の如く乱立した新電力事業(PPS)だが、近年、問題のハコ企業が相次いで手を出している側面がある。石山GatewayHoldingsやリミックスポイントなどはその一例だ。しかし、経産省が固定買取制度の見直しに取り掛かったことを受け、新電力ブームにも陰りが見え始めている。
■そんな中、新電力事業で急成長し、アベノミクス株高の時流に乗って昨年末にIPOしたエナリス(6079 マザーズ)にある疑惑が持ち上がっている。主幹事は野村証券で、初値は公開価格を大幅に上回り、社長の池田元英も経済紙のインタビューに度々登場するなど、人気銘柄の一つでもある。ハコ企業とは縁のないように思えるエナリスに一体何が・・・。
■疑惑とは、エナリスの売上に実態の伴っていないものが紛れている可能性である。前期(2013年12月期)のバランスシートに計上された売掛金約33億円のうち、約10億円は「テクノ・ラボ株式会社」という会社に対するものである。ところが、この会社に実態といえるものはほぼ無いことが本誌取材で分かった。現地は廃材置き場のような場所である(写真を参照)。この「テクノ・ラボ」、石山GatewayHoldingsとも多額の取引があることが分かっている。
■エナリスの前期バランスシートに計上されている売掛金の大半は、「太陽光発電設備及びディーゼル発電機設備の販売等」によるもので、全体の8割強の28億円に上る。これはエナリスの一般企業向けサービスの「エネルギーマネジメント事業」、電力トレーディングと電源開発の「パワーマーケティング事業」という2つのセグメントのうち、後者に属する。前者の売上は35億円で、後者が66億円なのに対し、一人当たりの売上高は前者6472万円、後者は6億90万円と10倍近い差が生じている。いびつな事業構造がそこにはある。
■エナリスは、文字通り爆発的な成長を遂げた会社である。11年度の売上約15億円が13年度には約102億円となり、14年第二四半期時点では約124億円に達している。池田は『週刊エコノミスト』のインタビューで「20年までに売上高は1兆円を超えなくてはと思っています」と大見得を切っている。
■だが、利益を見ると11年は約2億6000万円、12年は4億1000万円、13年は4億2000万円、14年第二四半期は2億円と、売り上げの伸びに対して利益率は著しく下がっている。加えて営業キャッシュフローは常にマイナスである。13年は△9億1000万円、14年第二四半期は△15億円である。エナリスはキャッシュの不足分を今年5月の増資で約54億円、そして約18億円を新たに借り入れることで賄っている。要は「株券を刷って」、会社をまわしている状態だ。
■むろん、こうした財務の怪しさは、電力需要の急増で資金が追い付かなくなっているだけかもしれない。しかし、エナリスがきちんと説明をしないから疑念が深まってくる。本誌は「テクノ・ラボ(株)」や財務に関する質問をぶつけたが、エナリスは「個別事例における詳細の回答は、控えさせていただきたく存じます」の一文を返してくるのみであった。普通、会社にとってあらぬ疑いをかけられたら、否定するなり、説明するなり、それなりの対応を取るものである。
■さらにもう一つ不可解な点がある。エナリスは今年2月、東京・南青山の「日本エネルギー建設」という会社を買収した。同社は、12年4月に設立されたばかりの会社。帝国データバンクによると、13年3月期は総資産6億3000万円、純資産約6000万円で、売上は3億8000万円なのだが、純利益は56万円しかない。エナリスはこの会社の株式46%を約9億9千万円分の株式交換で、残り54%を10億8000万円で取得した。これにより、20億円近いのれん代が計上されている。
■エナリスはこののれんを8年間で均等償却するが、今の利益率では今後、大幅な減益が予想される。日本エネルギー建設のデューデリジェンスは株式会社パートナーズ・コンサルティングがおこない、評価法はDCF法によるものである。この評価法は、過去の実績よりも将来的な事業計画に重きを置くもので、売り側にとって有利な評価が算出されやすいが、それにしても20億円とは大きすぎるのではないか。
【本誌スタッフライター 半田修平】
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コメント
先程、この記事を証拠として添付し「証券等監視委員会」に風説の流布に該当する旨通知しました
投稿: | 2014年10月23日 (木) 19:13
ご苦労様でした。ただ当サイトは、証券取引等監視委員会、金融庁の方が常時見に来られているので、
あまり意味がなかったかもしれませんね。
投稿: 東京アウトローズ編集部 | 2014年10月23日 (木) 21:32