【萬物相】日本のメディア

 2003年、大統領府での韓国と英国の首脳会談後に行われた記者会見を見守った。両国の記者2人ずつが両首脳に対し交互に質問する形式だった。当時、英国のトニー・ブレア首相は国内の問題で窮地に立たされていた。英国の記者は「辞任する考えはないのか」と尋ねた。別の英国の記者も「韓国の大統領には何も聞くことはない」と言い、ブレア首相に同じ質問をした。「英国の記者たちはこれほどまでに容赦ない質問をするのか」と思った。

 英国メディアにとって、政治家以上に格好の餌食となるのは王室だ。「ザ・サン」のような大衆向けタブロイド紙は毎日のように王室の一挙手一投足を報じている。艶聞(えんぶん)や飲酒をめぐるスキャンダル、豪華な暮らしぶりなどを暴くことに躍起になっている。今年6月、タブロイド紙のデイリーメールは、ウィリアム王子夫妻がケンジントン宮殿の台所を修理するのに450万ポンド(約7億7000万円)を使ったと報じた。また最近は、競馬大会で2位になったエリザベス女王所有の競走馬にモルヒネの陽性反応が見られたと報じた。1843年に創刊されたタブロイド週刊紙「ニュース・オブ・ザ・ワールド」は、違法な盗聴まで行って王室関連の記事を書いたとして物議を醸し、自主的に廃刊した。

 少し前、日本政府は「昭和天皇実録」を完成させ公開した。昭和天皇は太平洋戦争当時の日本の元首だった。だが、1万2000ページに及ぶ膨大な実録には、1941年に昭和天皇が真珠湾攻撃を承認したという内容はない。敗戦直後にマッカーサー元帥と面会し「私が全ての責任を負う」と述べたことも記されていない。これはマッカーサー元帥の回顧録に書かれている話だ。昭和天皇が靖国神社参拝をやめた理由にA級戦犯の合祀(ごうし)を挙げたという事実も書かれていない。これは昭和天皇のそばで話を聞いた側近がメモしていたことだ。しかし、このような実録をめぐって、日本の主要メディアは一切批判していない。

 「皇室の保護」にとりわけ積極的な新聞が産経新聞だ。天皇の「お言葉」が発表されるたび、その全文を掲載している。数日前、現天皇の5親等に当たる典子女王が結婚した際にも、全て敬称を付け、「された」という敬体で記事を書いた(訳注:原文ママ)。敬体の記事は北朝鮮の新聞や報道を除けば世界的にも類例がない。朝日新聞が慰安婦問題に関する過去の記事数本を「誤報」として取り消したのに対し、慰安婦自体が存在しなかったかのように書き立てたのもまた産経新聞だ。

 今月16日、韓国外交部(省に相当)報道官の定例記者会見で、産経新聞の記者が「韓国には言論の自由があるのか」「韓国は人権国家といえるのか」と問いただした。産経新聞は極端主義者たちの反韓デモも見て見ぬふりをしている。どんなにいいことを言ったとしても、誰がそれを言ったかによって、違った言葉に聞こえるものだ。

辛貞録(シン・ジョンロク)論説委員
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