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2014-10-23 【読書感想】40歳、初めてのお見合い

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みんな結構、おせっかい。

そして意外にあったかい。

――人気掲示板「発言小町」で400万人が感動!

恋愛、仕事、家族をめぐる6つのしみじみエピソード。


電車男』の時代と比べると下火になってしまった「ネット発の書籍」なのですが、まだ、けっこうたくさん出てはいるようです。

これは、読売新聞社が運営するニュースサイト『大手小町』の掲示板『発言小町』から、6つのトピックとそのレスを選んだものです。

 1999年10月、「ユーザーが楽しく交流できる場」として誕生した発言小町も、15周年を迎えました。開設当初にトピ・レス合わせてわずか数十本だった投稿は、今では毎日数千本に。月間アクセス数1億8000万人、ユニーククーザー数400万人という大きな集いの場に成長しました。

発言小町』がターゲットにしている層を考えると、幼稚園に通っている息子の同級生のお母さんの10人に1人くらいは、「小町ユーザー」ではないか、という数字です。

このくらいになってくると、「ネットという特別な場所だから」というよりは、「世の中の女性の平均的な意見」が、ここにはあるのかもしれません。

もちろん、「わざわざ掲示板に書き込む人」というのには、それなりのバイアスというか、性格の偏りがある可能性も否定はできないでしょうけど。


最初に紹介されているのが、このトピック(一部を抜粋しています)

 派遣先の上司(35歳女性)が、語尾に「にゃん」をつけるのです。

 例えば「このアンケート、明日までにまとめておいてにゃん」、こんな感じです。

 人を呼ぶ時は、例えば吉田さんだったら「吉にゃん」という感じで呼びます、私も「きむにゃん」と呼ばれています。

 私の派遣先部署は、この上司を、もう一人女性社員(25歳)がいて、この人もネコ語で喋っています。ちなみに私は30歳です。

 上司はとてもいい方です。不満はありません。派遣先も雰囲気がよいです。

 ただ、ただ! どうしてもこの「〜にゃん」に体が拒否反応を起こしてしまい、じんましんが出ています。

僕は『発言小町』って、ほとんど見たことがないのですが、僕のネットでの観測範囲での印象からは、「すごく殺伐としたやりとりが行われている場所」だと思っていたんですよね。

でも、この本に採り上げられているトピックをみると、けっこう、温かい言葉をかけてくれる人もいるのだな、と感じました。

「明らかに釣り」とか「あまりにも殺伐としている」トピックやレスは、書籍化の際に選ばれなかったのは間違いないのだとしても。


このトピックも『マツコ有吉の怒り新党』に送れよ!と思ったのですが、むしろ、あの番組のほうが「ふたり+夏目三久さんによる『テレビ発言小町』」みたいなものなのです。成立時期を考えると。


「パワハラで鬱を発症してしまった私にとっては、『にゃん』なんて、むしろ羨ましい職場です」

「さすがに仕事場で使う言葉としては、不真面目なのではないか」

「一度使ってみたら、案外慣れるかもしれませんよ」

などというレスが収録されているなか、こんなのも採り上げられていました。

 言おうと頑張っても言えないんでしょ?

 聞いたら、言おうとしたら、じん麻疹が出るんでしょ?

 心療内科か、皮膚科に行って猫語のせいでじん麻疹が出るという診断書をもらって、上司に提出して強要しないようにお願いすればいいでしょう。

 体調に異変が起きているのですから、パワハラじゃないの? と思ってしまいますが。社内だけといっても、うっかり社外の人や、クライアントに聞かれたら、信用問題になると思うんですけど……。


出た、「これをプリントアウトして病院へ行け!」

こういうレスを読むたびに、「この人は、自分が相談者の立場でも、こんなふうに主張して病院に行くのだろうか……」と思います。

というか、心療内科や皮膚科の医者は、こういう相談をされて「診断書を書いてくれ」と言われても、困るのでは……内容を読んでみると、パワハラ的に「にゃん語」を強要されている、という感じでもないですし。

発言小町」で相談すると、こういうのが山ほど返ってくるのではないか、と考えてしまう、僕の「はてな脳」……


この本を読んでいると、世の中には、けっこう、隣人の生活感あふれる会話を微笑ましく聞いていたり、日常でイケメンに遭遇することを楽しんでいたりするような人も、少なくないのだな、とホッとします。

とくにネット上では「尖っているところ」ばかりが露出してしまいがちなので、「そこまで殺伐とした人ばかりじゃないよね」と。


ただ、この本のタイトルにもなっている、「40歳、初めてのお見合い」のトピックについては、この真面目な女性と、それを応援する人々が、途中から、なんだかちょっと怖くなってきて。

レスをする人たちは、この40歳の女性のことを、「あなたみたいな素晴らしい人なら、きっとうまくいきますよ」とか、「この見合い相手の素敵な男性と、結婚できるはず!」みたいな感じで、どんどん盛り上がっていっています。

具体的なアドバイスも、いろいろとなされているのです。

「最初に会う前には、美容院に行っておけ」とか。


でも、人間関係とか、恋愛って、どんなに相性が良いと思っている人相手でも、長く付き合っていけば、イヤなところも見えてくるし、ケンカすることだって、ありますよね。

そういう現実のなかで、やっていくのが「普通」なわけで。

このトピックの雰囲気だと、傍観者たちがつくった神輿に乗せられた相談者が、周囲から自分と相手の男性のことを過剰に美化されてしまった状態で、結婚に向けて押し流されているような気がするんですよ。

結局、この相談者(トピ主)は、「しばらく、みなさんにお返事するのはやめさせてください」という、距離を置く選択をしています。

応援されるっていうのも、大変だよなあ、と。


予想以上に「微笑ましい内容」の本ではありました。イラストにもほのぼのとした味があります。


わざわざ書籍として読む理由があるか、と問われると、「ネットで読むのと、そんなに変わりないような気がする」というのが、僕の答えなんですが。


こういう本を読むと、あの『電車男』の「編集の妙」をあらためて思い知らされます。

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