トップページ社会ニュース一覧“妊娠女性の降格 違法で無効”最高裁が初判断
ニュース詳細

“妊娠女性の降格 違法で無効”最高裁が初判断
10月23日 19時27分

“妊娠女性の降格 違法で無効”最高裁が初判断
K10056477211_1410232014_1410232037.mp4

病院で働いていた女性が妊娠を理由に降格させられたのは不当だと訴えた裁判の判決で、最高裁判所は「妊娠や出産を理由とした降格は原則、違法で無効だ」という初めての判断を示しました。
職場での「マタニティーハラスメント」が大きな問題となるなか、判決は企業側に妊娠や出産をした女性に不利益な扱いをしないよう厳格な対応を迫るものとなりました。

広島市の病院で働いていた管理職の女性は、妊娠した際に負担の軽い部署への異動を希望したところ、管理職から外されたため、法律で禁じられている妊娠を理由とした不利益な扱いに当たると主張して裁判を起こしていました。
23日の最高裁判所の判決で、第1小法廷の櫻井龍子裁判長は「妊娠や出産を理由にした降格は、女性の自由な意思に基づく承諾があったと客観的に認められる場合や、円滑な業務運営などに支障があり、降格させても女性の不利益にもならないような特別な事情がある場合を除いて原則として違法で無効だ」という初めての判断を示しました。
そのうえで、「原告の女性は降格を承諾していたとはいえない」と指摘して訴えを退けた2審に審理のやり直しを命じました。
妊娠や出産をした女性に対する職場などでの嫌がらせはマタニティーハラスメントと呼ばれ、女性が長く働き続けられる環境を整えるうえで大きな問題となっています。
こうしたなかで、最高裁が示した判決は極めて限定された場合を除き、妊娠などをした女性への不利な処遇は許されないとして企業側に厳格な対応を迫るものとなりました。

「大きな意味がある評価できる」

判決を受けて広島市で記者会見した原告の女性の代理人の下中奈美弁護士は「女性は判決文を読んで非常に喜んでいた。本人の自由な意思に基づく承諾があったと客観的に認められる場合や、降格による不利益が法の趣旨に反しない特段の事情がある場合を除き、妊娠や出産を契機に降格などの不利益な扱いをすることは違法だと、最高裁が一般的な基準を示したことは大きな意味があり評価できる」と話しました。
そのうえで、「労働局に寄せられるマタニティーハラスメントの相談件数は全国的に増えているので労働局は最高裁がきょう示した基準を今後、行政指導などの際、活用できると思う。子どもを産み、育てることとキャリアを積んで要職に就くことが両立できる社会の後押しになって欲しい。多くの女性にとって朗報だと思う」と話しました。

「諦めずに声を上げてよかった」

原告の女性は弁護士を通じ、「諦めず声を上げてよかったと喜びの気持ちです。妊娠をきっかけに受けた処分によってこれまで何度も憤り、傷つき、悔しい思いをしてきました。新しい命を宿した女性がこのような苦しみを受けることはあまりに酷で、あってはならないことだと思います。安心して子どもを産み育てながら働きがいのある仕事を続けられるようになってほしいと思います。そのためにきょうの判決が役立ってほしいとせつに願っています」とするコメントを出しました。

「政府としてしっかりと対応」

菅官房長官は午後の記者会見で、「妊娠・出産などを理由とする解雇などの不利益な取り扱いは法的に禁止されている。こうした点の周知徹底、さらには労働者に対する相談支援について、政府としては、引き続き、関係する省が連携しながら、しっかりと対応していきたい」と述べました。

「企業と労働者の双方で考える必要」

女性の働き方や人事管理などに詳しい法政大学キャリアデザイン学部の武石恵美子教授は「最高裁の判決は人事異動や降格の判断を企業が一方的にできるのではなく、本人が同意し納得しないといけないと明確に示した点が重要だ。今後は、妊娠や出産をした労働者を切り捨てるような風潮をなくし、能力を生かし、高い意欲を持って仕事に励んでもらうために何が必要か、企業と労働者の双方で考えていくことが求められる」と話しました。

今回の裁判のケースは

今回の裁判では、妊娠した女性を降格させた人事上の対応がマタハラに当たるかどうかが争われました。
原告の女性は、勤務していた広島市の病院で管理職の副主任に就いて、患者のリハビリなどを担当していました。
6年前、妊娠したため、負担の軽い業務への変更を希望し、別の部署に異動しましたが、この際、副主任から外されたため、法律で禁じられている妊娠を理由にした不利益な扱いだと訴えていました。
1審と2審は「異動先の部署にはすでに管理職がいて副主任を新たに置く必要がなかった。女性も降格を承諾していた」という病院側の主張を認め女性の訴えを退けました。
これに対し、女性は最高裁判所に上告して、「副主任から外されることは異動後に突然、電話で伝えられただけで納得いく説明はなかった。体調を考えると十分に反論できず、承諾していたわけではない」と主張していました。

関連ニュース

k10015647721000.html

関連ニュース[自動検索]

このページの先頭へ