ネ・ウィン大統領(当時)自らが、勲章を手渡して最高の敬意を表した。ビルマ独立を推進した南機関の鈴木大佐はすでに他界されていたので、大佐の未亡人の節子さんが勲章を受け取った。この勲章は独立の英雄、アウン・サン(かつてはオン・サンと呼ばれていた)将軍の名前を取ったもので、アウン・サン将軍の娘が、有名な民主化運動指導者アウン・サン・スーチー氏だ。
アウン・サン将軍やネ・ウィン大統領は、「独立三十人志士」のメンバーで、彼らは海南島で日本陸軍の訓練を受けた。彼らを中心にビルマ独立義勇軍(BIA)が創設され、BIAは日本陸軍とともにビルマに進軍し、祖国を英国から解放したのであった。
インドネシアのスカルノ大統領(当時)は1988年8月17日の独立記念日に、同国の独立に尽力した金子智一氏ら旧軍軍人を中心とする6人の日本人に国家最高の栄誉「ナラリア勲章(=独立名誉勲章)」を授与している。教科書が教えないアジア解放の歴史がそこには息づいている。
■藤井厳喜(ふじい・げんき) 国際政治学者。1952年、東京都生まれ。早大政経学部卒業後、米ハーバード大学大学院で政治学博士課程を修了。ハーバード大学国際問題研究所・日米関係プログラム研究員などを経て帰国。テレビやラジオで活躍する一方、銀行や証券会社の顧問、明治大学などで教鞭をとる。現在、拓殖大学客員教授。近著に「米中新冷戦、どうする日本」(PHP研究所)、「アングラマネー タックスヘイブンから見た世界経済入門」(幻冬舎新書)