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【社会】

価値観国が強要も 道徳教科化を答申 中教審

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 中央教育審議会(中教審)は二十一日、現在は教科外活動の小中学校の道徳を、検定教科書を用い学習評価を行う正式な教科とすることを決め、下村博文(はくぶん)文部科学相に答申した。文科省は二〇一八年度の教科化を目指し、学習指導要領の改定や教科書検定基準の作成に入る。ただ政権が特定の価値観を押しつけ、子どもたちの思想統制につながるという懸念は根強い。検定基準や評価方法など課題も多い。 

 道徳教育をめぐっては戦前、教科「修身」による愛国心教育が行われ、国民を戦争に駆り立てたとの批判が強い。第一次安倍政権は改正教育基本法に愛国心条項を盛り込み、四月に文科省が配布した副教材「私たちの道徳」にも愛国心養成のページがある。このため、教科化に抵抗感を持つ教育関係者も多い。今後は、文科省がつくる教科書の検定基準の内容が焦点となる。

 答申は道徳を、数値での五段階評価などになじまないことから、一般教科と区別して「特別の教科 道徳」(仮称)と位置付けた。評価方法は、担任教諭が成績表に学習状況や成長の様子を文章で記述するが、評価のポイントや基準は今後、検討する。教材として検定教科書を無償配布。授業は原則として担任教諭が担当。当面は現行の週一回程度の年間三十五コマ(小一は三十四コマ)を維持する。

 授業内容は、いじめ問題への対応をはじめ、インターネットの情報モラルや生命倫理など現代的なテーマも取り上げる。中教審は教員の指導力向上や養成が課題とし、複数校のリーダー役の設置を促すとともに、大学などでの教員養成の必要性を提言した。

 下村文科相は答申を受け二十一日、「これを契機に、社会全体で子どもたちの生きる力を育成できるよう尽くしたい」と述べた。

 安倍晋三首相は第一次政権時の〇七年にも道徳の教科化を目指した。しかし、中教審は検定教科書の導入に対する反発などから答申を見送った。

 第二次安倍政権では、一一年の大津市の中二いじめ自殺事件などをきっかけに、教育再生実行会議が昨年二月に教科化を提言。文科省は当初、副教材を使って来年度の教科化を考えていたが、検定教科書が必要と判断して一八年度の実施を目指すことにした。

 <教科> 法律上の定義はないが、中教審は2008年に「一般的に、免許を持った専門教師が、教科書を用いて指導し、数値などで評価を行う、と考えられる」とした。今回の答申では道徳は「(専門教師でない)学級担任が担当することが望ましく、数値などによる評価はなじまない」として国語、社会などとは区別。「特別の教科」(仮称)という新たな枠組みを設け、道徳を位置付けるよう提言した。

 

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