[写真]道徳教育の充実を目指す安倍政権(Natsuki Sakai/アフロ)

 小中学校で行われている「道徳の時間」を「特別の教科 道徳」(仮称)に格上げする検討が、大詰めを迎えています。文部科学省は、中央教育審議会が近くまとめる答申を基に来年度以降、順次実施に移したい考えです。今どうして、道徳教育の格上げが必要なのでしょうか。また、なぜ「特別」なのでしょうか。

「学校の教育活動全体」で行うのが前提

 まず、現在の道徳教育がどのように位置付けられているかを確認しましょう。

 道徳教育は、戦後一貫して「学校の教育活動全体を通じて行う」(学習指導要領総則)とされています。学級活動や学校行事はもちろん、国語や社会だけでなく算数・数学や理科など教科の授業の中でも道徳教育は行われる、というのが前提です。ただし、一定の学習時間は必要だということで1958年以来、小中学校に「道徳の時間」が特設されました。専門用語としては、道徳教育は教科ではなく「領域」と位置付けられています。

 こうした経緯には、教育勅語に基づく徳目を教え込むことを中心にしていた戦前の教科「修身」 に対する反省が大きく影響していたことも確かです。

実はあいまいな「教科」の定義

 ところで今回、なぜ「特別の教科」としているのでしょうか。

 実は、「教科」とは何かという明確な定義はありません。ただし、一般的には(1)免許を持った専門の教師が、(2)教科書を使って指導し、(3)数値等による評価を行う――とされています。

 このうち(1)に関しては、もともと教員免許を取得するための大学の教職課程で道徳の指導法が必修化されています。道徳教育が学校の教育活動全体を通じて行われる以上、改めて独自の免許を出すというのもおかしな話になります。

 (3)に関しては、中教審への諮問の前に設けられた有識者による「道徳教育の充実に関する懇談会」(2013年4~12月)では、人格全体にかかわることを数値により評定をつけることはなじまない、と結論付けました。一方で道徳の時間を充実したものとするためには、(2)のように検定教科書を使うべきだとしました。こうした一般的な教科との違いから、同懇談会が「特別の教科」と位置付けるよう提言し、それが中教審にも継承されたわけです。

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