社説:閣僚ダブル辞任 失態を謙虚に反省せよ
毎日新聞 2014年10月21日 02時30分(最終更新 10月21日 16時22分)
理解できないのは松島氏が記者会見で語る辞任理由が「内閣の足を引っ張れない」などの説明に終始し、選挙管理委員会によっては配布禁止を明示しているうちわを配ったことへの反省がほとんど聞かれなかったことだ。うちわについて「(寄付行為となる)有価物ではない。法律に反しない」と開き直るようでは政治家としての資質すら疑問だ。
2閣僚辞任で思い起こすのは第1次安倍内閣の迷走である。政治とカネをめぐるスキャンダルなどから5閣僚が相次ぎ交代する「ドミノ」が起きたことは政権に極めて大きな打撃を与えた。
◇古い政治体質と決別を
第2次内閣は閣僚に進退に波及する事態が起きなかったことが政権の安定に寄与してきた。それだけにダブル辞任が政権に与える影響は大きい。野党側は江渡聡徳防衛相の収支報告書に資金管理団体が江渡氏個人に寄付した記載があり、報告書を訂正した問題も追及している。政権の自浄能力が問われよう。
今回の疑惑で浮かんだのは有権者に取り入ろうとする古い政治体質だ。衆院で中選挙区制度が廃止され、小選挙区で政策本位の選挙導入がうたわれて約20年もたつのに、観劇ツアーによる後援会の組織票固めという旧態依然たる方法が踏襲されている。うちわ配布は物品の提供をめぐる感覚の鈍さの表れだ。安倍内閣や自民党が本当に事態を重くみているのであれば、こうした体質こそ謙虚に直視しなければなるまい。
さきの改造で起用した女性5閣僚のうち、2閣僚が失脚したことで首相人事は裏目に出てしまった。女性の積極登用をアピールしようとする狙いばかりが先走り、人選の吟味が後手に回らなかったかが結果的に問われる。
一方で、今回の一件が内閣が掲げる女性の進出に水を差すようなことがあってはならない。むしろ国会議員、地方議員を問わず女性全体の人材を厚くしていくための努力が政党に欠かせないはずだ。
与党は閣僚のダブル辞任を区切りとして政権運営の立て直しを急ぐ構えだ。確かに国会で議論すべき内外の課題は山積しており、建設的な政策論争が望ましい。とりわけ経産相が受け持つエネルギー政策は重要な岐路に立っている。
だが、政府や与党が説明や反省もなく幕引きを急ぐようでは、論戦の前提となる政治への信頼が損なわれる。第1次内閣の二の舞いを演じないためにも、首相や自民党が襟をただす時である。