社説:閣僚ダブル辞任 失態を謙虚に反省せよ

毎日新聞 2014年10月21日 02時30分(最終更新 10月21日 16時22分)

 異常な事態である。不明朗な政治資金や地元での物品配布がそれぞれ問題になっていた小渕優子経済産業相、松島みどり法相が同じ日にダブル辞任に追い込まれた。

 第2次安倍内閣で閣僚が不祥事で交代するのは初めてだ。わずか1カ月半前の改造人事で目玉だった女性5閣僚のうち2氏の失脚だけに政権の受けた打撃は深刻だ。

 安倍晋三首相の任命責任は重い。幕引きを急ぐばかりではなく政権のゆるみを真摯(しんし)に反省し、信頼回復に努めなければならない。

 ◇責任重い首相人事

 「国民の皆様に深くおわびを申しあげる」。午前に経産相、午後に法相から辞表を受け取った後に首相はこう語り、国民に陳謝した。

 まず、政治資金問題の深刻さを露呈したのが辞任に伴う小渕氏の記者会見である。自ら「大きな疑念がある」と矛盾を認める以上、閣僚辞任は当然だ。だが、疑問点の解明からはあまりに遠い内容だった。

 小渕氏の疑惑の核心は、支援者向けに恒例で実施していた観劇会をめぐる政治資金の不透明さだ。小渕氏の二つの政治団体は2010年と11年の観劇会での支出が収入よりも2600万円以上、上回っていた。しかも、12年分については記載すらないことも新たに判明した。

 記者会見で小渕氏は参加者から1人1万2000円の実費を集めたとの説明を繰り返した。それでも記載された収入額とずれがある。政治資金収支報告書への記載義務違反や、選挙民への利益供与を禁じる公職選挙法に抵触しかねないという疑惑は残されたままだ。「わからないことが多すぎる」というのは小渕氏以上に国民が抱いた印象であろう。

 小渕氏は故小渕恵三元首相の地盤を継いだ。「監督責任が十分でなかった」と語るが、父譲りの組織に安易に乗っかってきたツケではないか。資金管理団体で、親族が経営する店から購入した多額の「品代」を支出するなど公私のあいまいさも指摘された。基本的に政治資金管理の認識が甘すぎる。

 野党からは議員辞職を求める声も出始めている。国会で早急に調査結果を説明しなければならない。

 やはり改造で入閣した松島法相も地元での「うちわ」配布について民主党議員から公選法違反容疑で刑事告発され、法務行政のトップとして深刻な状況となっていた。

 法相就任後もうちわを配っていたことからは順法精神の希薄さがうかがわれ、法相として責任は免れなかった。小渕氏との同時決着には早期の収拾を図る政権側の意向も感じられた。

最新写真特集