エボラ出血熱:死者2000人超える WHO
毎日新聞 2014年09月06日 10時30分(最終更新 09月06日 11時36分)
【ローマ福島良典、ニューヨーク草野和彦】世界保健機関(WHO)は5日、西アフリカ諸国で猛威を振るうエボラ出血熱による死者数(疑い例を含む)が2000人を超えたと発表した。感染拡大の深刻化を受け、WHOは4、5の両日、スイス・ジュネーブで専門家会合を開き、罹患(りかん)した後に回復した元患者の血液を感染者に輸血する治療法を使用できるとの見解を示した。
WHOの5日時点の集計によると、疑い例を含む感染者数はギニア、リベリア、シエラレオネ、ナイジェリア、セネガルの5カ国で3967人となった。うち半数以上の2105人が死亡した。死者数の内訳はリベリア1089人▽ギニア517人▽シエラレオネ491人▽ナイジェリア8人。
8月9日時点の集計で死者数が1013人に達してから1カ月足らずで死者数が倍以上に拡大する事態となった。WHOは8月28日、感染を封じ込めるためのロードマップ(行程表)を発表したが、感染拡大に歯止めはかかっていない。
国連の潘基文(バン・キムン)事務総長は5日、「感染拡大が早すぎて、対応が追いついていない」と述べ、国連内外の機関の連携強化を目的とした危機対策センターを設置する方針を明らかにした。また、対策費として6億ドル(約630億円)の支援を国際社会に呼びかけた。
WHOのキーニー事務局長補は5日、専門家会合後の記者会見で「多くの患者が出る一方、回復した者も多く、(ほかの患者の治療のために)血液や血清を提供できる」と述べた。元患者の血液・血清にはエボラウイルスに対する抗体が含まれるからだ。1995年にコンゴ民主共和国で感染が起きた際、8人が輸血を受け、7人が回復した。
また、WHO専門家会合では、2種類のワクチンについて効果が期待されると判断した。11月までに欧米やアフリカの医療機関で安全性に関する臨床試験が実施され、結果を踏まえて、西アフリカ諸国での使用が認められる見通し。
会合では、富士フイルムホールディングス傘下の富山化学工業が開発したインフルエンザ治療薬「ファビピラビル」など8種類の新薬の有効性、安全性も検証した。開発段階の米国製治療薬「ZMapp」についてキーニー事務局長補は「さらに試験が必要」との見方を示した。