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【エボラ出血熱】
「緊急事態宣言が人命を救うわけでない」 死者1000人に迫る
【ベルリン=宮下日出男】西アフリカでのエボラ出血熱の感染拡大で、世界保健機関(WHO)が「国際的緊急事態」を宣言したことを受け、各国の取り組みが加速化しつつある。国際社会が協調して史上最悪の事態に対処し、有効な手が打てるかが焦点だ。
「宣言が人命を救うわけではない」
西アフリカの感染地域で活動する「国境なき医師団」(MSF)の現地責任者、バート・ヤンセン氏は8日、緊急事態宣言についてこう語った。MSFは3月ごろから「前例のない」事態だと警告。約700人のスタッフを送り込んでいるが、「限界」だと繰り返し訴えてきた。
エボラ熱による死者は6日までに961人とさらに膨れ上がった。WHOは緊急事態宣言の発出とともに、各国に感染拡大阻止のための措置を取るよう勧告し、現地の脆弱(ぜいじゃく)な医療態勢への支援も訴えた。
8日にはリベリア、シエラレオネに続き、ナイジェリアが3カ国目となる非常事態宣言に踏み切った。感染拡大地域とは国境を接していないが、渡航者により感染が飛び火し、死者2人が出た。アフリカ最大の人口を持つ同国の危機感は強く、感染の恐れがある139人も監視下に置いた。
米国は8日、1200万ドル(約12億円)の追加支援を表明。欧州連合(EU)も同日、支援額を約1200万ユーロ(約16億円)と倍以上に増額、可動式の医療施設の追加提供も申し出た。