── 今回は新しいアイドル像を考察するという感じで、発芽寸前のアイドルに注目され、自身でも「NEO GIRLS FESTIVAL」というイベントを開催され、プロデュースされているアイドルから日本全国の名立たる地下アイドルに光を当ててらっしゃるサエキけんぞうさんにお話をうかがおうと思います。
サエキ:「いやいやいや、とにかくよろしくお願いします」
── 早速ですが、最近はアイドル氷河期の時代と言われていますが?
サエキ:「とんでもない! 逆に今は黄金時代ですよ」
── 今はアイドル黄金時代ですか!
サエキ:「AKB48があって、モーニング娘。、ベリーズ工房、そしてPerfumeもブレイクしてますし、黄金時代だとボクは思っていますよ。単純に、80年代の、例えば松田聖子とか、そういったアイドル像は無いのかもしれませんが、そもそもアイドルという概念は“ひとり”じゃなくてもいいわけで、過去にはキャンディースをはじめ、海外にもグループアイドルはたくさんいましたしね」
── では、オウム返しで申し訳ないですが、今は確実にアイドルの黄金時代であると?
サエキ:「間違いないです。その中で、地下アイドルなんていうものも出てきているわけです」
── 氷河期はいつ頃終わったんですか?
サエキ:「氷河期はボクが思うに90年頃から97年頃まで、モーニング娘。の登場までですね。あの年代は『アイドルはもうダメなのか?』という感じでしたね」
── そこに入ってきたものというのは?
サエキ:「あの頃は音楽業界的にディーヴァといわれる女の子たちが全盛でね、小室哲哉さんなんかがプロデュースする女の子がね、小室さんもアイドルプロデュースが好きな方だし」
── 安室奈美恵をはじめ、華原朋美や篠原涼子なんかも大ブレイクしましたね。
サエキ:「でもね、朋ちゃんはそもそもアイドルだったし、篠原涼子さんにいたっては東京パフォーマンスドール出身ですからね、基本的にはアイドル的な出し方を実はしていたと考えられますね。ただ見え方はアイドルではないというね」
── アーティスト的な感じですよね、まさに90年代というか。
サエキ:「ですね、アーティストやあるいはディーヴァ的な見せかた。でも、その見せかたに隠れてはいましたけど、実際はアイドルなわけで、実は需要はあったんですよ」
── なるほど。では短絡的で申し訳ないですが、今はディーヴァが氷河期?
サエキ:「氷河期ではないですが、アイドルという部分をディーヴァな見せかたで隠しているアイドルは過渡期に入っているのはたしかですね。そもそも、ディーヴァは歌先行と考えられるときにその雰囲気があるわけです。さらに言うと、ディーヴァ自体は黒人歌手をひな形にしている面が多いです。歌い上げるソウルな感じがディーヴァの感覚だと思いますね」
── 重ねてなるほどです。では、この黄金時代はまだ続く?
サエキ:「やっぱりヒットが出ないとダメだと思うんですねえ。ちょっと今、その辺では終わっているかなという感じはしますけど、まぁボクはアイドルが好きだからこの流れが続いてくれればいいと思ってますけど、続くかどうかはわからないなぁ……」
── なんだかんだ、アイドルって増殖傾向にありますよね。
サエキ:「送り手はホントに増えていますよねぇ(苦笑)でもね、やはりアイドルってまだ売れているんですよ。一部のマニアだけで一般層に届いてないって意見もありますけど、Perfumeは50万枚売れているわけだし、AKB48も数10万枚ですよ。海外でも評価されてますしね」
── 海外でもですか!?
サエキ:「そうなんですよ。スペインなんかじゃAKB48の歌を歌っているユニットがあったりしますしね。全世界的に広がってますよ。なので、普通に世界中の人がアイドルソングを聴いていると考えるほうが自然ですね」
── ちなみになんですが、ちょっと興味深い統計がありましてね、小学校高学年の女子のアンケートで「なりたい仕事」にアイドルとか歌手っていうのがないんですよ。
サエキ:「それは子どもの目から見ても食えるイメージがないからじゃないですかね(キッパリ)」
── アハハハハ! アイドルは食えないですか。
サエキ:「売れないことには大変ですよ。で、この話から進めると、そもそもというか、もはやアイドルというのは歌手に限らない、今はもう別に歌わなくていいんですよ」
── そ、そうなんですか!?
サエキ:「90年代後半にですね、アイドルニュースクールというイベントがロフトプラスワンであってですね、それを主宰する方が知り合いだったので、一度イベントに出たんですけど、歌を唱うコーナーとかそのイベントには一切なくて、ただ単にアイドルの子とお話するだけだったんです」
── なんなんですかそれは?(笑)
サエキ:「ボクもさすがに驚いてですね『すいません、今のアイドルって歌わないんですか?』と訊いたら『サエキさん、今はアイドルは歌わないんですよ」と言われて、スゴくがっかりした思い出がありますね」
── それはかなりがっかりしますね。
サエキ:「別にアイドルってものは歌を歌う存在ではないんですよ。今って本当に著作権なんかが非常に良い状態にないですから、やはり歌手ではないほうがね、ただ単にアイドル的な存在、みんなに熱狂的に迎えられればそれはもうアイドルということ、賞賛されて飛びつかれるような人たちをアイドルと呼ぶわけで、だから歌う必要はないんです」
── まぁ、グラビアアイドルってのもいますしね。
サエキ:「その通りです。なので、アイドルという考え方は実は非常に広いわけで、だからこそ初音ミクみたいな存在も出てくるわけです」
── ヴァーチャルアイドルに心酔するなんてボクにはさっぱりなんですけどね。
サエキ:「そうねぇ、もうそういうのもアイドルっていえるくらいですから、もうね、なんだっていいんです」
── アハハハハ! なんだっていいで終わらせないでくださいよ。
サエキ:「挙げ句のはてには老人アイドルみたいな人だって出てきちゃう時代ですから(苦笑)」
── なんですかそれ?
サエキ:「名古屋にアイドルを育ててる人なんですけど、見た目は40歳代と思われるんですが、老人にも似たような人がいるんですよ。名前がわからないんですけど、その人が女の子とユニットを組んで何かやってたりするんです」
── なんだかよくわかりませんけど、とにかくいつ何が出てくるかわからないですね(苦笑)
サエキ:「養老院のアイドルとかなんてのも出てくる可能性がありますね。とにかくですね、アイドルと呼ばれている人というのは人気があってミーハー的に飛びつかれる存在であれば良し。それであれば宇宙人であってもかまわないという感じがしますね」
── 宇宙人でもいいですか(笑)ではですね、最近主流の“にこいち”アイドルについてはどう思われますか?
サエキ:「鉄道マニアの鉄ドルとか、歴史マニアの歴ドルとかそういうのですね。何人か見たことはありますけど、やはり媒体に気をつかってというか、媒体に載るために一通り修練される感じというか、一部はやらされている感はありますけど、いいんじゃないですかね。アイドルの成り立ちはもちろん芸能プロダクションがデビューさせる形でずっと続いていたわけですし、90年代以前はアイドルのそのほとんどが芸能プロダクションの所属だったわけですけど、今は少し違いますよね」
── いつ頃から変ってきたんですか?
サエキ:「バブルが崩壊した後の頃、焼け野原の状態の頃ですね。そんな中、もともとは芸能事務所に所属していた宍戸留美がフリーになって、フリーアイドルと呼ばれだしてインディーズアイドルのハシリになった。それに続いて制服向上委員会という完全インディーズのグループが登場する。そのレベルになると芸能事務所には所属しない自主アイドルですよね、自分で自分をプロデュースするという流れが始まって。それが今の地下アイドルの源流ですね。90~92年あたり」
── なんだかパンクのシーンの始まりと似てますね。
サエキ:「そうですね、実際いまの地下アイドルはパンクロック的な味わいがありますよね。自分の力でやろうとすると自然に勢いが出てくるというか、激しい過激な感じになる人も出てきちゃうわけですよ」
── まぁ、社会に反発してるわけじゃないんですけどね(笑)
サエキ:「それは良い質問! もともとロックは社会への反発がテーマになっているわけだけど、アイドルはそういう意味ではロックと無縁なわけで、とくにアイドルといわれる人は反社会的なことはなるべく歌えないようにしているんです。一部の悪意のある詞を除けば、通常アイドルソングは反社会というより、順社会ですね」
── 社会性を守るほうですよね。
サエキ:「そこが大きな違いですが、しかしですね、存在感はそこはかとなくね、反社会的なアイドルが、誰とはいえませんが、いたりもする場合があるからまたおもしろいんですよ」
「地下アイドルって、結局は誰も世話してくれる人がいないアイドルのことですよ。」ヘ続く
PROFILE
1958年7月28日、千葉県生まれ。ミュージシャン、作詞家、プロデューサー。1980年「ハルメンズの近代体操」でデビュー後、パール兄弟を結成。モーニング娘。「愛の種」など、多数の作詞を手がけ、テレビ、ラジオ出演の他、エッセイスト、プロデューサーとして幅広く活動中。2003年にはフランスでソロアルバム「スシ頭の男」を発売、フランス5箇所のツアーも行った。窪田晴男とのパール兄弟活動も再開し、2003年にはアルバム「宇宙旅行」発売の他、スタジオライブDVDも発売している。※サエキけんぞうオフィシャルサイト、プロフィールより転載※