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WBC世界バンタム級タイトルマッチ
王者 山中 慎介(帝拳) × 挑戦者 スリヤン・ソールンビサイ(タイ)
ライト級スペシャルマッチ10回戦
粟生 隆寛(帝拳) × ファン・カルロス・サルガド(メキシコ)
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WBC世界バンタム級タイトルマッチ
王者 山中 慎介(帝拳)VS 挑戦者 スリヤン・ソールンビサイ(タイ)

WBC世界バンタム級タイトルマッチ
王者 山中慎介(帝拳) 対 挑戦者 スリヤン・ソールンビサイ(タイ)

11年11月の戴冠から約3年、自信を増し強打に磨きがかかった山中が7度目の防衛戦を迎える。今回の相手は元WBC世界スーパーフライ級王者のスリヤン・ソールンビサイ(タイ)。山中の圧倒的有利が伝えられるが、スリヤンを侮ることは危険だ。

山中(23戦21勝16KO2分)は3年前、今回と同じ会場(代々木第二体育館)でクリスチャン・エスキベル(メキシコ)との王座決定戦を制してベルトを腰に巻いた。途中で館内の照明が消えるハプニングもあったが、山中はスリヤン戦の発表会見の席で「今度は照明が落ちても慌てずに対応したい」と余裕のコメントで笑いをとった。王者としての落ち着きと自信が感じられたものだった。初防衛戦は世界的なビッグネーム、ビック・ダルチニャン(アルメニア/豪/米)に判定勝ちに留まったが、V2戦からは衝撃的なKOを連発。目下5連続KO防衛を記録している。今回も倒せば具志堅用高氏が樹立した「世界戦6連続KO防衛」の日本記録に並ぶことになる。しかし、その件に関して山中は「意識はまったくない。でも、ボディでも顔面でもいいのでKOで勝ちたい」と話している。記録はあとからついてくるということなのだろう。

試合の11日前に32歳の誕生日を迎える充実の王者に対し、スリヤンは25歳と若さでは勝る。プロデビューは山中よりも半年遅いが、試合数は43戦(37勝16KO5敗1分)と2倍近い。11年8月、トマス・ロハス(メキシコ)を破ってWBC世界スーパーフライ級王座を獲得し、初防衛戦では名城信男(六島)を退けたが、翌12年3月のV2戦で佐藤洋太(協栄)にダウンを喫して判定負け。在位は7ヵ月に終わった。しかし、その後は2年半で17連勝(9KO)と復調している。注目すべきは今年に入ってから山中と同じサウスポーのフェルナンド・オコン(比)と2度対戦して12回判定勝ち、7回終了TKO勝ちを収めている点であろう。その試合をチェックした山中は「(サウスポーに対して)左ジャブと右ジャブをつかっていた。上体も巧みにつかうし、サウスポーは得意なのかもしれない。一発の怖さはないが、タイミングのいいパンチを打つ」と警戒の色をみせている。こうしてスリヤンの実力を認めたうえで、山中は「相手の出方しだいだが、来てくれれば序盤で終わる可能性もある。自分はそれぐらいのパンチを持っているから。練習している右でコントロールしたすえ、中盤でKOすることができればベスト。KOで終わるように努力する」と話している。

両者の戦力を単純比較した場合、サウスポーの山中の攻撃力、特に左ストレートという決め手が際立っている。「結局は今回も左で終わるかもしれない」と、山中自身も暗に左でのKOを予告している。こうしてみてくると王者のKO防衛が濃厚と思われがちだが、では、スリヤンはリスクの低い挑戦者なのかというと、決してそんなことはない。2階級制覇を狙うスリヤンは160センチと小柄な体をわずかに前傾させて圧力をかけ、フェイントを多用しながら飛び込むスタイルを持っている。サウスポー相手に繰り出す右ストレート、返しの左フックは要注意といえる。体を左に傾けて繰り出す左ボディブローも対サウスポーには有効に機能しそうだ。佐藤戦ではダウンを喫したものの、スリヤンは元来タフな選手だ。加えて12ラウンドをフルに10度も戦っており、スタミナやペース配分という点でも不安はないとみていいだろう。

山中が早い段階から伝家の宝刀「神の左」を抜いて圧勝するという予想が最も一般的なものといえる。いまの山中にはそれだけの技量と勢いがある。その一方、苦戦する可能性も捨てきれない。山中自身も「相手をリズムに乗せないようにしたい」というように、小柄な挑戦者の前進を持て余したまま後退するような展開は避けなければなるまい。いずれにしても序盤から目の離せないスリリングな展開になりそうだ。

ライト級スペシャルマッチ10回戦
粟生隆寛(帝拳) VS ファン・カルロス・サルガド(メキシコ)

ライト級スペシャルマッチ10回戦
粟生隆寛(帝拳) 対 ファン・カルロス・サルガド(メキシコ)

09年にWBCのフェザー級、10年にWBCのスーパーフェザー級を制覇した粟生が、3階級制覇に向けた最終テストマッチに臨む。相手のサルガドはスーパーフェザー級で2度の戴冠を果たした実績を持つ元世界王者。勝利はもちろんのこと、内容が問われる重要な試合といえる。

サウスポーの粟生はスピードとスキルを生かしたボクシングに定評があるが、試合によって波がある点が課題とされてきた。この4年を例にとってみても、世界戦でビタリ・タイベルト(カザフスタン/独)とウンベルト・グティエレス(メキシコ)に快勝したかと思うと、V2戦ではデニス・ボスキエロ(イタリア)に大苦戦。そしてV3戦ではターサク・ゴーキャットジム(タイ)に再び快勝。半年後のガマリエル・ディアス(メキシコ)戦は不調に喘いで判定負け。再起後は2連続KO勝ちを収めたが、今年4月の試合では再び接戦といった具合に好不調を繰り返している。地力があるだけに、それを高い次元で安定させることができれば三つ目のベルトは手の届くところにあるといえよう。

サルガドは09年10月、今回と同じ会場(代々木第二体育館)で粟生のジムメートでもあるホルヘ・リナレスに73秒でTKO勝ち、WBA世界スーパーフェザー級王座をメキシコに持ち帰った。翌10年1月の再来日時には内山高志(ワタナベ)に12回TKO負けを喫したが、11年9月にはIBFで世界王座返り咲きを果たしている。苦戦続きながらも3度の防衛を果たして勝負強さを示したが、昨年3月に無冠に戻った。11月の試合でも不覚をとっており、これが連敗後の再起戦ということになる。身長174.5センチ、リーチ177センチという大柄な右ボクサーファイターで、「左右ともに振ってくるパンチが多い」と粟生は分析している。相手の射程外に逃れて被弾を避けていてはペースをとられる危険性が高いだけに、粟生とすればインサイドに潜ってパンチを外しつつ攻めたいところだ。

サウスポーの粟生がスピードを生かして揺さぶりをかけ、出入りしながらボディを攻めることができれば自然とKOチャンスは生まれてくるはずだ。粟生は「理想は顔面への左ストレート、ボディへの左、そして右フックでのKO。7回か8回あたりで倒したい」と青写真を描いている。

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