アベノミクスで日本人は貧しくなった
安倍氏は「日本はデフレ脱却の途上にあり、もう少し時間をかければ景気は回復する」と信じているようだが、これは逆である。景気が悪化した原因は、アベノミクスなのだ。
その最大の原因は、以前のコラムでも書いた交易条件の悪化である。これは政治家にはほとんど理解されていないが、今の状況を理解する上で重要な指標なので、くり返し説明しておこう。
交易条件というのは輸出物価指数/輸入物価指数、つまり「輸出品1単位で輸入品が何単位買えるか」という指標である。これが下がると、円で買える輸入品が少なくなる。
図のように2000年以降、交易条件は1.5から0.86に約40%下がっている。これは石油危機を上回る大幅な悪化である。1円で買える輸入品が4割減り、日本人は貧しくなったのだ。その原因は、大きくわけると次の3つある。
・円安
・輸入物価の上昇
・輸出物価の低下
「円安になると輸出が増えて景気は回復する」と思う人が多いが、それは実物ベースの輸出/輸入価格が一定の場合の話で、2000年代のように第1次産品の価格が大幅に上がった(例えば原油価格は3倍)場合には、円安でその影響が増幅され、貿易赤字が増えてしまう。
他方、円安になっても輸出はほとんど増えない。これは外貨建ての価格が下がっても、輸出するものが少ないからだ。日本の製造業は2009年以降の円高局面で生産拠点の海外移転を進めたので、例えば半導体を台湾で生産してアメリカに輸出する場合、ドル/円レートの影響はまったく受けない。