Updated: Tokyo  2014/10/22 01:18  |  New York  2014/10/21 12:18  |  London  2014/10/21 17:18
 

【コラム】日本のウーマノミクスはうわべだけ-W・ペセック

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  10月21日(ブルームバーグ):日本の安倍晋三首相にとって、女性閣僚5人のうち2人が1日で相次ぎ辞任したのはかなりの失態であり、堅苦しく男性中心の日本の政界を刷新する自身の取り組みを大きく後退させた。ただもっと重要なのは、女性に活力を与えることを目指す首相の活動の真の問題を思い出させたことだ。つまり、安倍首相の政策はまだ中身を伴わずシンボルにすぎないという点だ。

安倍首相は日本の女性の地位向上への方針を裏付けるため、先月の内閣改造で5人の女性閣僚を任命した。日本は男女平等に関する国際評価でブルキナファソを下回るが、ここしばらく、日本の将来の成長の鍵となる女性の社会進出支援を促すための進歩的な姿勢やコミットメントに対して世界のメディアは安倍首相率いる自民党を好意的に報道してきた。

小渕優子経済産業相と松島みどり法相が政治資金や公職選挙法上の問題で20日に辞任したことで、安倍首相の任命責任が当然問われている。首相は政府の政策に異議を唱えかねない強くて独立心のある女性を選ばず、不人気な政策の売り込みを助けてくれる融和的でテレビ映りの良い人物を好んだようだ。小渕氏は2011年の東京電力福島第1原発の事故以降、依然物議を醸している原発の再稼働問題を担当していた。自民党有力者らは恐らく、2人の子供を育てる40歳の母親でもある小渕氏を起用すれば、原発の安全性を国民に納得させる助けになると想定していたのだろう。

他の女性閣僚は右派としての評判で選ばれたようだ。高市早苗総務相と山谷えり子拉致問題担当相は最近、日本のネオナチ団体元リーダーらとのツーショット写真が報じられ騒がれた。有村治子氏が伝統的な家族の価値感を強く支持するにもかかわらず女性活躍相に就任したことには、男女同権論者もあきれ返っている。有村氏は夫婦別姓制度や女性の皇位継承権に反対論を唱えている。

形だけの平等主義

この点では、安倍首相による任命は浅はかで形だけの平等主義にすぎないように見える。日本の政界では見慣れた光景だ。日本で前回女性閣僚が5人誕生したのは、安倍首相の師である小泉純一郎氏の政権下でだった。小泉氏が起用したのはテレビの女性アンカーや元モデル、料理研究家で、メディアからは「小泉の刺客」候補と呼ばれた。

女性の社会進出を加速させる安倍首相の取り組みが実を結ぶ可能性が高ければ、こうした事実は大した問題ではない。だがこれまでのところ、安倍首相が打ち出している男女平等に向けた3本柱のアプローチは遠慮がちで想像力に欠ける。保育所は整備されても子育て世帯は多大なコストを負担しなければならない。育児休業期間を3年に延長する方針については、キャリア志向の女性の多くに子供を持つことを思いとどまらせかねない。企業には女性役員・管理職の登用を要請しているが、安倍政権では既に女性幹部登用の数値目標化など主要な方針で後戻りの兆候がある。

安倍首相が本当に女性の労働力参加を高めたいなら、前向きに取り組む企業に報いる税制優遇措置を活用する明確な政策を打ち出す必要がある。また、日本の人口の半分を活用できていない企業を名指しして恥をかかせ、罰すべきだろう。心から女性に活力を与えるには大胆で創造性に富んだ政策が必要だ。形だけの平等主義はいらない。(ウィリアム・ペセック)

(ペセック氏はブルームバーグ・ビューのコラムニストです。コラムの内容は同氏自身の見解です。同氏のツイッター は@williampesek)

原題:Japan’s Womenomics Is Little More Than Skin Deep: WilliamPesek(抜粋)

記事に関する記者への問い合わせ先:東京 Willie Pesek wpesek@bloomberg.net

記事についてのエディターへの問い合わせ先:Nisid Hajari nhajari@bloomberg.net

更新日時: 2014/10/21 14:56 JST

 
 
 
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