October 21, 2014
数年前、ハーバード大学の昆虫学者ピオトル・ナスクレッキ(Piotr Naskrecki)氏は、南米北部のガイアナ共和国で全長30センチもの子犬サイズのルブロンオオツチグモ(Theraphosa blondi)に遭遇した。最近になって同氏が当時の様子をブログで詳しく説明すると、世界最大級のクモが再び脚光を浴びるようになった。
ナスクレッキ氏は、夜中に起こったクモとの遭遇についてこう記している。「硬い脚が地面を踏みしめ、その重みで乾いた落葉の砕ける音がした」。
「ポッサムかネズミのような小型の哺乳動物と思いながら、懐中電灯のスイッチを入れて、音のする方向へ光を当てた。見た瞬間、大きくて毛深い、ネズミくらいの大きさの動物だと思った」。
ところがそれは、体重が170グラムにもなるタランチュラの仲間、ルブロンオオツチグモだった。
ほかの科に属すタランチュラがハチドリを捕食している様子を描いた18世紀の彫刻から、今ではオオツチグモ科の全種が「バードイータ・・・
ナスクレッキ氏は、夜中に起こったクモとの遭遇についてこう記している。「硬い脚が地面を踏みしめ、その重みで乾いた落葉の砕ける音がした」。
「ポッサムかネズミのような小型の哺乳動物と思いながら、懐中電灯のスイッチを入れて、音のする方向へ光を当てた。見た瞬間、大きくて毛深い、ネズミくらいの大きさの動物だと思った」。
ところがそれは、体重が170グラムにもなるタランチュラの仲間、ルブロンオオツチグモだった。
ほかの科に属すタランチュラがハチドリを捕食している様子を描いた18世紀の彫刻から、今ではオオツチグモ科の全種が「バードイーター(birdeater)」の別名を持っているわけだが、ルブロンオオツチグモも別名ゴライアスバードイーター(Goliath birdeater)として広く知られている。
◆優しい巨大グモ
その愛称とは対照的に、ルブロンオオツチグモが鳥を食べることはほとんどない。ジョージ・ワシントン大学のクモ専門家グスタボ・ホルミガ(Gustavo Hormiga)氏によると、ルブロンオオツチグモは主に節足動物を食べるという。
「彼らは大抵のものを食べる。小さいネズミからトカゲまで、脊椎動物に出くわせば何でも捕食するだろう」。
徘徊性のルブロンオオツチグモは、大きい鋏角を使って獲物を噛み殺す。多くのクモと同様、鋏角に毒を有するが、人間に対する毒性は強くない。噛まれるとスズメバチに刺されたような痛みを感じるが、治療する必要はないという。
◆刺激毛に注意
ルブロンオオツチグモは地中の穴の中で暮らす。哺乳動物がルブロンオオツチグモを狙って穴を掘り始めると、毒よりも効果的な武器である腹部の刺激毛で対抗する。
「顕微鏡で見ると、銛のような形をしている」とホルミガ氏は述べる。
「4番目の後ろ脚を使って腹部を擦ると、刺激毛が空気中に放たれる。人体に付着すると、とてもかゆくなる」。
ゴライアスバードイーターをペットとして飼う人や研究者は、手袋をはめる必要がある。人間にはかゆみをもたらす程度だが、小型の哺乳動物にとっては致命的となり得る。
ナスクレッキ氏は、刺激毛に触れた時の様子と被害についてこう語っている。
「ルブロンオオツチグモが後ろ脚で毛だらけの腹部を擦り始めました。そのしぐさを初めて見た私は、『何て可愛いんだろう!』と思いました。でも、その刺激毛が私の眼球に触れた途端、かゆみが襲い、それから数日間はかゆくて涙が流れていました」。
ルブロンオオツチグモのメスは、50~150個の卵を直径30センチメートル以上もある卵嚢(らんのう)に産み付ける。
孵化した子グモは2~3年で成虫になり、その間、母グモと巣穴の中で過ごす。メスは最長で20年生きることもあるが、オスの寿命は3~6年ほどと短く、多くは交尾後に死んでしまう。
◆エビのような味
南米北東部に住む人々の多くは、ルブロンオオツチグモを美味しい食べ物と思っている。調理法は、まず刺激毛を火で炙ってから、バナナの葉にくるみ蒸し焼きにする。タランチュラの専門家リック・ウェスト(Rick West)氏はかつて、ベネズエラのアマソナス州に住むピアロア族とルブロンオオツチグモを食べた経験がある。ウェスト氏によると、それは驚くほど風味がよく、しっとりとしていたそうだ。
「白い筋肉は、スモークしたエビのような味がした。ねばねばした腹部の中身は、バナナの葉の中で固くなるまで加熱され、じゃりじゃりとした砂まじりの食感で、苦かった。2センチほどの鋏角は、食後歯の間に詰まったクモの外皮を取るための爪楊枝として重宝ししたよ」。
爪楊枝が内蔵された食事にありつける機会はそれほどないだろう。
ナスクレッキ氏は、「ついにこの素晴らしい神話的な生き物に出会うことができて、有頂天になった」と記している。
Image captured from video by National Geographic