小笠原:サンゴ密漁 中国船、夜も横行 無灯火で衝突危険

毎日新聞 2014年10月21日 12時05分(最終更新 10月21日 19時49分)

小笠原諸島姉島の南西海上で、サンゴの密漁を行う中国漁船の船員たち=2014年10月7日撮影、小笠原島漁業協同組合提供
小笠原諸島姉島の南西海上で、サンゴの密漁を行う中国漁船の船員たち=2014年10月7日撮影、小笠原島漁業協同組合提供
小笠原諸島姉島の南西海上で、サンゴの密漁を行う中国漁船=2014年10月7日撮影、小笠原島漁業協同組合提供
小笠原諸島姉島の南西海上で、サンゴの密漁を行う中国漁船=2014年10月7日撮影、小笠原島漁業協同組合提供

 小笠原諸島(東京都)近海で中国漁船によるサンゴ密漁が横行している問題で、衝突などを恐れて漁を控える漁船が相次ぎ、地元漁業への影響が深刻化している。海上保安庁が取り締まりを強化しているが、全てを拿捕(だほ)するのは難しく、中国漁船が領海内に入るたびに追い出す「イタチごっこ」が続いている。【佐藤賢二郎】

 「鋼鉄製で100トン以上の中国船に対し、こっちは10トン未満のグラスファイバー製。戦車と乳母車ぐらいの差があり、当たったらひとたまりもない」。小笠原村議会議長でサンゴ漁師の佐々木幸美さん(71)は語る。同諸島周辺の水深150〜200メートルの大陸棚は、中国などで珍重されるアカサンゴの他、高級魚のヒメダイやハタが取れ、地元漁師の貴重な漁場となっている。

 だが、中国漁船が急増した9月以降、地元漁船の漁網が引っかけられたり、中国船に囲まれたりするトラブルが多発。中国船は夜間、無灯火で操業することも多く、衝突の危険もあるため、地元漁船の多くが操業を控えているという。

 佐々木さんによると、小笠原周辺では約15年前まで、台湾漁船による大規模なサンゴ密漁が続き、生態系が破壊された。海底は魚たちの産卵場所でもあり、漁獲高は激減。台湾当局の規制強化で密漁が無くなり、環境が回復したばかりという。

 父島の漁師、関伴夫さん(48)は「白昼堂々と操業し、罪の意識も無い。笑顔で手を振る船員もいた」と話す。今月に入って海保が大型巡視船2隻を投入し、態勢を強化した結果、大きな船団は姿を消したが、周辺では今も中国漁船が目撃されており、「監視が手薄になればまた戻ってくる。手遅れになる前に抜本的な対応を取ってほしい」と訴える。

 ただ、海保は沖縄県・尖閣諸島周辺で常態化する中国公船による領海侵犯に対応するために全国の巡視船を投入せざるを得ない状況が続く。また、中国漁船を拿捕すれば、巡視船で本土まで4〜5日かけてえい航する必要があり、大幅な戦力ダウンになる。警告を無視して領海内で操業を続けるような悪質なケース以外は拿捕していないのが現状だ。

 政府は10月以降、外交ルートを使って複数回、中国側に注意喚起や再発防止を求めているが、効果は出ていない。

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