その、たったひと言がソフトバンクの勝因を鮮明に表していた。
「呼びましょうか? 大隣を」
前日に日本ハムに逆王手をかけられ、3勝3敗で迎えた10月20日の第6戦。7回無失点の快投を演じ、レギュラーシーズン3位チームの下克上を阻止した大隣憲司について、秋山幸二監督は目一杯の言葉で賞賛した。
「僕なんかより大隣がね、中4日で行ってくれるということで。『まだ行けます』と7回まできっちり投げてくれて、また、結果を出してくれて。頭が下がります」
そして「呼びましょうか?」と数度繰り返した後、殊勲者をお立ち台へと招き入れたのだ。
指揮官が真っ先に賛辞を贈った大隣憲司。
CSのMVPには、第1戦でサヨナラ打、第4戦でも決勝打を放ち、第6戦でも2点目のタイムリーを演出するなど6打点を叩き出した吉村裕基が選ばれた。
もちろん、吉村以外にも2本塁打、第6戦でも先制打を放った内川聖一、打率4割の李大浩、チーム最多の9安打をマークした松田宣浩の中軸も揃って活躍。スタメンでトップの4割2分9厘と当たった細川亨ら、下位打線も奮起した。
投手陣も不安定だった中継ぎ、抑えを、シーズン終盤に不調だった中田賢一、スタンリッジが見事にカバーした。
チーム全員で掴み取った勝利であることは間違いない。ただ、指揮官が真っ先に賛辞を贈り、MVPの吉村も「大隣かと思った」と本音を述べたように、「陰のMVP」を挙げるのならば、2試合14回2/3を2失点と抜群の投球を見せた大隣になるだろう。
そして忘れてはいけないのが、大隣の快投を信じた秋山監督の「攻めの采配」である。
ファイナルステージでは、投手起用がひとつのポイントだった。
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