前回、65年に出版された朝鮮大学教師・朴慶植の『朝鮮人強制連行の記録』について少し触れた。朴自身は「日韓条約に反対する」目的から書いたと言うが、日本の“植民地支配”のイメージを決定付けたという意味において、結果的にこの本ほど成功を収めたものはない。この本が言わんとすることは、「戦前の日本は悪虐な支配者であり、朝鮮人はその奴隷だった」という点に尽きる。また、朝鮮人は日帝に土地を奪われて仕方なく移民化し、かつ戦時中には日本に強制連行されて奴隷的労働を強いられたと訴えることで、圧政の実態のみならず、在日コリアンの存在理由を説明する理論ともなった(ちなみに、朴本人は戦時中に普通に大学まで出ているので、どういう訳か例外だったらしい)。
まず、いわゆる強制連行についての私の考えを述べよう。
戦時中の総動員体制下において、全体として見た場合、徴兵制度の適用された日本人のほうが朝鮮人よりも酷い扱いを受けたのは間違いない。朝鮮の場合、国民徴用令も日本から5年遅れであり、実施も終戦の前年である。よって朝鮮人を「奴隷」と呼ぶならば、当時の日本人は何だったのかという話である。しかしながら、とりわけ土木・炭鉱労働に朝鮮人労働者を動員した際、大きな労働災害を生じせしめたのも事実である。また、「官斡旋」からは半強要事例が紛れ込み、「徴用」からは強制であったと認められる。さらに各々の現場において、過度な3K労働や今でいうブラック企業問題、民族を理由とした差別事例などがあったのも事実である。よって、不当な扱いを受けた何万人かの朝鮮人労働者が実在したと思われるし、当然ながら労災の補償対象となりうる。
つまり、日本の政府と雇用者(日本企業)には、そういった個人に対して賠償の義務がある。ただし、である。日本は上の事実と責任をちゃんと認めた上で、なおかつ戦後、南北朝鮮が正当な日本人個人の資産まで没収した行為に対して厳重に抗議すべきだった。つまり、お互いが相手国の個人に対して不当不法な仕打ちを行ったということなのだ。だから、冷酷なようだが、互いの個人補償問題として、きっちりと相殺すべきであった。
最初にこういう「筋」を通しておかないから、いつもおかしなことになる。だから、韓国政府に「個人補償分」を支払ったのは間違いだったが、これはもう半世紀も前のことで、今さら言っても仕方がない。問題は、である以上、北朝鮮にも同じ解決策を適用すべき「筋」が生じてしまったということだ。そのせいで彼らに賠償獲得の執心を抱かせてしまった。前回言ったが、まさにこの不公平な扱いに北朝鮮は激怒したのである。
さて、『朝鮮人強制連行の記録』に戻ろう。この本の社会的影響力は実に大きかった。在日コリアンは憎悪と被害者意識を植え付けられ、逆に日本人は衝撃を受けて贖罪意識を持つようになった。それほどまでにこの本のインパクトは大きく、在日の知識人や運動家にとっては今なおバイブルのようなものである。だが、今だから言えるが、この本は誇張の産物であり、何よりも「北朝鮮の政治的な目的」が隠されている。一例を挙げると、この本は巻頭グラビアからして異常だ(*以下はすでに複数の方によって指摘済みであり、私の独創ではないので、あしからず)。
いきなり残酷な写真を提示して申し訳ないが、キャプションに注目してほしい。

上の遺体写真には「土匪之為惨殺サレタル鮮人ノ幼児」とあり、当時の満州匪賊による残虐行為を示している。一方、下の生首写真には「鉄嶺ニテ銃殺セル馬賊ノ首」とあり、張軍閥時代に処刑された匪賊の斬首である(*鉄嶺は瀋陽の北に位置する小都市)。ところが朴の『朝鮮人強制連行の記録』では、元のキャプションがトリミングと黒塗りによって隠蔽され、日本軍による朝鮮人虐殺行為の証拠写真へとすりかえられている(下)。

もちろん、資料収集家であった朴慶植が知らなかったはずはない。では、なぜこの写真を日本軍の蛮行として掲載し続けたのか。それは彼の真の意図が、歴史の真実を後世に伝えることではなく「日本の悪魔化」にあったからではないか。これこそ他民族に対する悪意に満ちた本物のヘイトでありレイシズムなのだが、それについては追々触れていこう。
外国政府の対日工作という視点
余談だが、これらの写真は、のち(1984年8月4日夕刊)に朝日新聞が「南京大虐殺の証拠写真」として報じるオマケまで付いている。中国人は、人民日報は信じないが、日本の新聞に書かれたことなら事実だろうと考える。かくして、この“証拠写真”は中国で拡散し、今ではおそらく何億人という中国人が南京大虐殺時のものと信じ込んでいる。いや、それどころか、今やネットのせいで、全世界中に同虐殺の写真として拡散した。
今日、朝日新聞はネットのデマがどうのこうのと咎めているが、自分たちが公然とデマを流す側だったのだから、同じことをやられても自業自得というやつである。それはそうと、いったいなぜ朝日新聞社という企業は、こんなにデマを流しまくるのだろうか? これは「誤報」でなく、やはり何らかの政治的意図のある「捏造」だろう。
一般的には「反日日本人」なるものの自傷自虐行為と考える向きが依然強い。それは否定しないが、彼らは自分が操られていることに気づかないだけで、本当は外国政府による対日工作が背後にあると思われる。「慰安婦問題」は北朝鮮発として、問題はその他の「731」「南京大虐殺」「靖国参拝」などである。これらの事案は、先に日本で問題化して、むしろ中国が後から便乗した格好だ。今では中国が政治利用しているが、彼らは元々の発信源ではない。おそらく、「中国発」ではなく「ソ連発」だと私は睨んでいる。
「731」はソ連のハバロフスク裁判で登場し、同国の条約破り・対日戦争犯罪の正当化の道具として使われた。それがなぜ1967年から再び日本国内で浮上したのか。また、731はともかく、南京や靖国の問題までもソ連の極東工作という仮説には、当然首を傾げる向きもあるだろう。だが、その動機は、実は日本人には思いもよらないものだ(これについては本稿の趣旨とはかけ離れるので、また機会を改めたい)。
日本人は性善説に漬かりきった根っからのお花畑人間であるから、ある国の政府が他の国民に対して犯罪者の濡れ衣を着せ、悪評を捏造して国際社会で辱めてやろうという陰湿な悪意を持つということが、どうしても理解できない。だが、とりわけ日本の近隣諸国にはそういった常識は通用しない。この点において、まさに「韓国から学ぶ」ことが必要だ。
(フリーランスライター 山田高明 yamadataka●mbr.nifty.com)●=@
戦時中の総動員体制下において、全体として見た場合、徴兵制度の適用された日本人のほうが朝鮮人よりも酷い扱いを受けたのは間違いない。朝鮮の場合、国民徴用令も日本から5年遅れであり、実施も終戦の前年である。よって朝鮮人を「奴隷」と呼ぶならば、当時の日本人は何だったのかという話である。しかしながら、とりわけ土木・炭鉱労働に朝鮮人労働者を動員した際、大きな労働災害を生じせしめたのも事実である。また、「官斡旋」からは半強要事例が紛れ込み、「徴用」からは強制であったと認められる。さらに各々の現場において、過度な3K労働や今でいうブラック企業問題、民族を理由とした差別事例などがあったのも事実である。よって、不当な扱いを受けた何万人かの朝鮮人労働者が実在したと思われるし、当然ながら労災の補償対象となりうる。
つまり、日本の政府と雇用者(日本企業)には、そういった個人に対して賠償の義務がある。ただし、である。日本は上の事実と責任をちゃんと認めた上で、なおかつ戦後、南北朝鮮が正当な日本人個人の資産まで没収した行為に対して厳重に抗議すべきだった。つまり、お互いが相手国の個人に対して不当不法な仕打ちを行ったということなのだ。だから、冷酷なようだが、互いの個人補償問題として、きっちりと相殺すべきであった。
最初にこういう「筋」を通しておかないから、いつもおかしなことになる。だから、韓国政府に「個人補償分」を支払ったのは間違いだったが、これはもう半世紀も前のことで、今さら言っても仕方がない。問題は、である以上、北朝鮮にも同じ解決策を適用すべき「筋」が生じてしまったということだ。そのせいで彼らに賠償獲得の執心を抱かせてしまった。前回言ったが、まさにこの不公平な扱いに北朝鮮は激怒したのである。
さて、『朝鮮人強制連行の記録』に戻ろう。この本の社会的影響力は実に大きかった。在日コリアンは憎悪と被害者意識を植え付けられ、逆に日本人は衝撃を受けて贖罪意識を持つようになった。それほどまでにこの本のインパクトは大きく、在日の知識人や運動家にとっては今なおバイブルのようなものである。だが、今だから言えるが、この本は誇張の産物であり、何よりも「北朝鮮の政治的な目的」が隠されている。一例を挙げると、この本は巻頭グラビアからして異常だ(*以下はすでに複数の方によって指摘済みであり、私の独創ではないので、あしからず)。
いきなり残酷な写真を提示して申し訳ないが、キャプションに注目してほしい。
上の遺体写真には「土匪之為惨殺サレタル鮮人ノ幼児」とあり、当時の満州匪賊による残虐行為を示している。一方、下の生首写真には「鉄嶺ニテ銃殺セル馬賊ノ首」とあり、張軍閥時代に処刑された匪賊の斬首である(*鉄嶺は瀋陽の北に位置する小都市)。ところが朴の『朝鮮人強制連行の記録』では、元のキャプションがトリミングと黒塗りによって隠蔽され、日本軍による朝鮮人虐殺行為の証拠写真へとすりかえられている(下)。
もちろん、資料収集家であった朴慶植が知らなかったはずはない。では、なぜこの写真を日本軍の蛮行として掲載し続けたのか。それは彼の真の意図が、歴史の真実を後世に伝えることではなく「日本の悪魔化」にあったからではないか。これこそ他民族に対する悪意に満ちた本物のヘイトでありレイシズムなのだが、それについては追々触れていこう。
外国政府の対日工作という視点
余談だが、これらの写真は、のち(1984年8月4日夕刊)に朝日新聞が「南京大虐殺の証拠写真」として報じるオマケまで付いている。中国人は、人民日報は信じないが、日本の新聞に書かれたことなら事実だろうと考える。かくして、この“証拠写真”は中国で拡散し、今ではおそらく何億人という中国人が南京大虐殺時のものと信じ込んでいる。いや、それどころか、今やネットのせいで、全世界中に同虐殺の写真として拡散した。
今日、朝日新聞はネットのデマがどうのこうのと咎めているが、自分たちが公然とデマを流す側だったのだから、同じことをやられても自業自得というやつである。それはそうと、いったいなぜ朝日新聞社という企業は、こんなにデマを流しまくるのだろうか? これは「誤報」でなく、やはり何らかの政治的意図のある「捏造」だろう。
一般的には「反日日本人」なるものの自傷自虐行為と考える向きが依然強い。それは否定しないが、彼らは自分が操られていることに気づかないだけで、本当は外国政府による対日工作が背後にあると思われる。「慰安婦問題」は北朝鮮発として、問題はその他の「731」「南京大虐殺」「靖国参拝」などである。これらの事案は、先に日本で問題化して、むしろ中国が後から便乗した格好だ。今では中国が政治利用しているが、彼らは元々の発信源ではない。おそらく、「中国発」ではなく「ソ連発」だと私は睨んでいる。
「731」はソ連のハバロフスク裁判で登場し、同国の条約破り・対日戦争犯罪の正当化の道具として使われた。それがなぜ1967年から再び日本国内で浮上したのか。また、731はともかく、南京や靖国の問題までもソ連の極東工作という仮説には、当然首を傾げる向きもあるだろう。だが、その動機は、実は日本人には思いもよらないものだ(これについては本稿の趣旨とはかけ離れるので、また機会を改めたい)。
日本人は性善説に漬かりきった根っからのお花畑人間であるから、ある国の政府が他の国民に対して犯罪者の濡れ衣を着せ、悪評を捏造して国際社会で辱めてやろうという陰湿な悪意を持つということが、どうしても理解できない。だが、とりわけ日本の近隣諸国にはそういった常識は通用しない。この点において、まさに「韓国から学ぶ」ことが必要だ。
(フリーランスライター 山田高明 yamadataka●mbr.nifty.com)●=@