中村修二教授:特許法改正「猛反対」 技術守る改革訴え
毎日新聞 2014年10月21日 10時42分(最終更新 10月21日 11時29分)
青色発光ダイオード(LED)の開発でノーベル物理学賞の受賞が決まった米カリフォルニア大サンタバーバラ校の中村修二教授(60)が、東京都内で毎日新聞の単独インタビューに応じ、社員が仕事で行った発明(職務発明)の特許権を「会社のもの」にする特許法改正の動きに、自身の経験から「猛反対」と述べた。また、「LEDの発光効率を飛躍的に高めたい」と新たな研究目標を語った。
中村さんは、職務発明を巡る特許法改正について「絶対に猛反対です。米国のまねをするのなら、誰もがベンチャーを起業できる仕組みを作らないとおかしい」と批判。米国の企業に所属する研究者には、優れたアイデアがあれば独立して起業できる機会が与えられていると指摘し、「日本はベンチャーが開発した技術が守られるよう司法制度を改革し、人材が流通するようにすべきだ。特許権だけ米国のまねをするなんてとんでもない」と述べた。
政府は法改正で、報奨金のほか、社員の昇進や留学なども含めた報奨を会社に義務付ける方針だが、「例えば、プロ野球選手がたくさんホームラン打ったから監督やコーチに昇進したいなんて言わない。サラリーマンだけが洗脳されている」と強調した。
中村さんは青色LEDを発明した対価として、開発時に研究者として勤めていた日亜化学工業(徳島県)に200億円を請求する訴訟を起こし、8億円超で和解。危機感を持った経済団体などによる制度見直しを求めるきっかけとなった。2000年に研究の拠点を米国に移し、「研究費を自ら集める必要があり、米軍関連の予算を受けるため」に、約10年前に米国籍を取得した。
現在のLEDは投入した電気を光に変える効率が50〜60%にとどまっているが、材料の改良などで「100%に近づけたい」と今後の目標を語った。【千葉紀和】