2014年10月18日

「ニセ医学」に騙されないために



すでにだいぶ話題になっているので、ご存じの方も多いと思うのですが

たまたま読んで感銘を受けたので。


動物医療の世界でも、

砂糖水に波動を加えてなんちゃらかんちゃらとか

生のものを食べさせないとがんになるとか

う○こが臭いと早死にするだとか(まあものすごく変なにおいの時は病気の可能性もありますけどね)

デトックスでアトピーを治すとか科学的に根拠の全くない情報が満載ですね。


この本では、「ステロイドは悪魔の薬?」「抗がん剤は毒にしかならない?」など

ついつい信じてしまいがちな「ニセ医学」について、

きちんとした根拠とともにわかりやすく書いてあります。




すべての病気やがんに効く魔法の薬はないですし、

自然のものなら副作用もなく安心というのも嘘です。

私も鍼灸は使いますが、あくまでも決まった治療の補助として使うのみで、

がんや難病まで気功や鍼灸のみですべての治療をするのは正直どうだろう・・・と思います。 


ただ、大切な家族が病気で苦しんでいるときに

万能薬や免疫力を挙げる水やスピリチュアルなものに頼りたくなる気持ちはとてもよくわかります。


基本的には治らない病気です、何%の確率でこのくらいの治癒効果が期待できるけどリスクもこのくらいありますという人より
(きちんとした医療従事者には説明責任がありますから、病状やリスクについては説明しないといけません)

これさえやれば副作用もなく完全に治ります!という人のほうを信じたくなっちゃうんでしょうね。

以前、勤めていた病院で他の先生の症例でしたが

フィラリア症でひどい全身症状を出していた老齢の柴犬を思い出しました。


一度心臓の薬や咳の薬など何種類かを処方された後にしばらく来ないと思っていたら

「薬は毒!自然の力で治そう!」というネットかなんかの情報に踊らされて

薬をやめ、やたらと高価な波動水的な何かを試したのちに

「やっぱり治らない」と末期状態で来院されていました。


いやそんな水飲ませる前にちゃんと駆虫しようよ・・・

体の中虫がうじゃうじゃなんだよ・・・


と思いましたが、自分がきちんとした知識を持たずにフィラリア症にしてしまったことを大変に悔やんで、

藁にもすがる思いでの行動だったようです。

高価なものほど効くような気がしてしまうんでしょうね。

治療をやめてしまったことで症状を悪化させてしまったことはどうだろうとは思いますが

そういう気持ちを考えると、飼い主さんを責めることはできないですよね。


先輩獣医さんは波動水的なものは続けたかったら続けて、

きちんと普通の治療しましょうねと言って引き続きお薬を処方していましたが

色々なことを考えてしまいました。 


心のよりどころとしてそういういう通常医療以外のものが必要になることもあるのかもしれませんが

そういう根拠のないものに対する知識を持つことで

いざどうしよう!!となってしまったときに

きちんと効果のある治療を捨てて、根拠のないニセ医学だけに頼る、

という最悪の状態を避けることが出来るのではないかと思います。




私の息子もけっこうひどめのアトピーで痒がって維持がなかなか大変で

そういうときに「ステロイドは蓄積する!」「脱ステロイド!!!」「免疫力をあげてアトピーを撃破!」

みたいなものを見ると

そんな文献はひとつもない、まったく根拠はないと思いつつも

気になってしまったり、よさそうなものをいろいろ試してしまったりしますが

結局通常医療が一番心地よく維持できるということを実感しています。 

ステロイドの恐怖を過度に宣伝することで、アトピー商法をしている人たちがどれだけいるか。

ステロイドは必要なときに適切に使えば本当に効果のある薬です。

私も昔はぜんそくの発作で吸入で助けられました。

きちんとした知識を持ち、適切に薬を使うのはとても大切なことなのです。



最近はネットを見ればバナー広告などでいやでもそういう情報が目に入ってきますし

facebookなどのSNSで根拠のないニセ医学情報がどんどん「いいね!」やリツイートで広がっているのをみると

きちんとした知識をもつことの大切さを感じますね。



実際に自分や家族が病気になり治療法を選択しなければならなくなると、

いくら客観的な事実をしっていても、迷ってしまうことが多々あると思います。

この本はそういったときに、どう治療法を選ぶべきなのかの助けになると思います。


実際にペットたちを含めた大切な家族や自分が具合が悪くなり、

何かに縋り付きたくなった時ではなく

心に余裕のあるうちに、こういう本を読んでおくとよいのではないかと思います。 

chimagyoro222 at 18:04│Comments(0)TrackBack(0) ちまぎょろ獣医日記 | レビューのようなもの

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