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看取ったのは妻でなく元妻、遺族年金の行方は

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2014/10/21 6:30
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 裁判記録をとじた厚いファイルを開き、埋もれた事案に目を向けてみれば、当事者たちの人生や複雑な現代社会の断片が浮かび上がってくる。裁判担当記者の心のアンテナに触れた無名の物語を伝える。

 今年映画化された川上弘美の小説「ニシノユキヒコの恋と冒険」。主人公は女性との出会いと別れを繰り返しながら、ついに安息の地を見いだすことができなかった。本を閉じて我が身を省みる。人生の終わりが近づいた時、そばにいてくれるのは誰か。そして、自分はその人に何を残せるのか――。

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 妻と長く別居中だった80代の元自治体職員の男性が、12年余りの闘病生活の末に亡くなった。最期を看取(みと)ったのは戸籍上の妻ではなく、20年前に離婚した70代の元妻だった。

■離婚6年後のSOS

 男性がこの元妻と結婚したのは60代のころ。2回目の結婚だったが、結婚生活はわずか3年で終わった。離婚成立の翌年に男性は別の女性と結婚し、またすぐに離婚。さらに2年後、元妻より10歳以上若い相手と4度目の結婚をした。案の定というべきか。その結婚生活もすぐに冷え切り、1年足らずで夫婦双方が家裁に調停を申し立てて別居を始めた。

 「具合が悪いから来てくれ」。別れてからも男性と連絡を取り合っていた元妻に、いつもと様子の違う電話がかかってきたのはそんな時だった。看護師資格を持つ元妻が駆けつけると、男性は体調が悪そうな様子で横になっていた。泊まりがけで面倒を見るため、元妻は6年ぶりに男性宅で同居を始めた。

 まもなく、男性は右脳血栓症で入院。退院後も障害が残り、さらに脳梗塞で再入院した。元妻は入院時の身元引受人になり、家族としての立場で病院の診療方針にも同意した。同居再開から12年を経て男性が亡くなるまで、付きっ切りで介護を続けた。

 一方、別居中の妻は、男性に電話して体調を尋ねたり、男性の家族に会って近況を聞いたりはしていたが、男性と直接会って言葉を交わすことはなかった。入院中も一度見舞いに訪れたが、付き添っている元妻に遠慮して病室には入らなかった。

 ところが、男性が加入していた職員共済組合は規定を形式的に当てはめ、元妻に対して「遺族年金の支給対象はあなたではなく妻」と告知する。男性の生活を支え続けた元妻は支給を求めて裁判所に訴え出た。

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