トルコ政府は20日、過激派組織「イスラム国」の攻勢が続くシリアのアインアルアラブ(クルド語でコバニ)防護のためにイラクのクルド人部隊ペシュメルガが自国領土内を通過することを認めた。米軍がシリアのクルド人部隊のために武器や弾薬を飛行機で空から落とす形の支援を開始した直後の決断。トルコはイラク・クルド人による領土通過を長い間認めていなかった。

 トルコのチャブシオール外相はアンカラでの記者会見でこの方針転換を表明したが、ペシュメルガがどのようにトルコを通過するかや、シリアのクルド当局がこの支援を受け入れるかなどについての詳細は明かさなかった。

 同外相は「ペシュメルガのコバニ支援のための移動を助けている。この件についての協議は継続中だ」と述べた。

 イラク・クルド兵のトルコ通過解禁は、アインアルアラブの防戦に苦闘するシリア・クルド兵らに対し米軍が空からの武器・物資支援を行った数時間に表明された。

 トルコのエルドアン大統領はこの空からの支援にも反対していた。18日にはトルコを通過する形での米国のシリアのクルド兵に対する武器供与は許さないとし、シリアのクルド人民兵は「イスラム国」と同じようなものだと発言していた。

トルコとの国境に近いシリア・クルド人の要衝アインアルアラブ(コバニ)/画像をクリックして関連インタラクティブを見る≫ Google Earth

 トルコ政府がシリアのクルド人部隊を警戒しているのは、同部隊が米国がテロ組織に分類するトルコのクルド労働者党(PKK)の方針に忠実なためだ。トルコ政府とPKKは30年にわたり紛争を続けている。

 オバマ大統領は18日、エルドアン大統領に電話でアインアルアラブへの空からの支援投下方針を伝えた。トルコの反対があっても米政府は武器供与を止める考えはなく、「イスラム国」と戦う姿勢への疑念を他国に抱かせないことを示すためだった。

 米政府関係者によると、米軍のC‐130輸送機はアインアルアラブの北西地域に武器、弾薬、医療品を入れた包みを27個投下した。

 この支援物資は最初にペシュメルガ部隊を統括しバルザニ議長が率いるイラクのクルド自治政府に搬送され、そこからアインアルアラブに送られたという。

 シリア反体制派の少数民族クルド人勢力で、アインアルアラブでの「イスラム国」との戦闘を指揮する民主連合党(PYD)指導部は、米国の支援を賞賛した。

 PYDを含むシリアのクルド族の政党の傘下にありPKKとも連携する社会民主運動の幹部アルダ・カリル氏は、米国の武器支援について、「より良い未来の礎を築く転換点となる非常に大きな意味を持つ」と述べた。