
Twitterでは長すぎるので、こちらで書きます。
アニゲメインで訪問していただいている方には申し訳ありませんが、完全にクラシックファン向けの記事として書かせて頂きます。突っ走ってます。ご容赦ください><
先日満を持して発売されたレナード・バーンスタイン/イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団のマーラー9番を聴きました。
以前に1985年大阪公演の海賊版CDを聴いてからというもの、このコンビによる演奏をずっと待っていた身としては、本当に嬉しいリリースでした。
で、肝心の演奏はというと。
……凄すぎて言葉になりませんでした。
マーラー9番のベストを挙げるとしても『これはちょっと、別格すぎるなぁ』という印象。
言葉にすると酷くチープになってしまうことや、私の乏しい語彙力が邪魔して『これ書く意味あるのか』と思ったりもしましたが、頑張ってみました。
ちょっと長くなったので、各楽章ごとの感想で綴ってみます。
第1楽章。
既にこの楽章だけで聴く価値が生まれます。そして一曲聴き終わった時のテンションになります。
全楽章の中で一番生命力に満ち溢れている楽章ではないでしょうか。全てのフレーズが生物のように蠢いている印象です。しかしそれはクトゥルフ神話における怪物のような嫌悪感はなく、どちらかというと荒廃した街に大量の植物が繁殖している『汚らしいまでの生命力』というイメージが強いです。
ひとつひとつの音符に生命力を感じる演奏を聴いたのは、チェリビダッケのダフニスとクロエ第2組曲以来です。あちらは『踊る人』でしたが。
また、生命力とともに多彩な感情表現も群を抜いています。特にTimpを始め打楽器が要所でテンポを早めて演奏しているので、聴いているこちらがびくっとなることがあります。
それから中盤のFlとVnの掛け合いが泣きそうなくらい情感豊かに響いていたことと、終盤で誰かが草原に横たわって夢を見ているような透き通った弦と木管のサウンドが凄かったです。
正直1楽章終了時点で、『これこの先集中力保つのか?』と不安になってました。……まあ杞憂だったんですが。。。
第2楽章。
過去のバーンスタイン盤ではあまりパッとしない楽章だったのですが、ここでは実に溌剌としたリズムが全体を支配していました。この楽章が『過去の回想』であると解説した文章がありましたが、まさにマーラーが故郷の広場でダンスを楽しんでいるような光景を思い浮かべました。
この音源では全体的にバーンスタインの足音のような軽い打音が響いているので、それもこの印象を助長しているかもしれません。
(こういう雑音が嫌いな人にはあまりオススメできるCDではないかもしれませんね。。。)
※ちなみにここで3分ほど休憩しました。集中力が切れそうだったので……
第3楽章。
最初、大阪ライブよりやや大人しめかなと思いましたが、終盤の追い込み方はそっくりでした。ACOの欠点の一つである3楽章の緊張感の欠如が払拭されています。それでも終盤まで比較的インテンポなので曲の見通しは案外いいです。
ラストの加速は圧巻。こちらの恐怖を煽ってくる様なaccelはちょっと他では聴けません。
そういえば4楽章を聴いていて思ったのですが、この曲が人間の今際の際を描いているのなら、ここで描かれている人物はこの楽章で意識を失っているのではと思いました。そうであるなら、最後のTuttiは絶叫の表現になるのでしょうか。マーラーが最後に『モーツァルト!』と叫んで逝ったような。
第4楽章。
同時期のバーンスタイン・ACO盤より控えめに、懐にすっと入ってくるような導入部だったので、身構えてた側としては少し肩透かしを食らった感がありました。とても達観したアダージョです。しばらくはゆったりと、響きに身を任せていたのですが……
正気を保ってられたのは、中盤トロンボーンが入ってくる箇所が終わる辺りまででした。正直そこからの音楽は言葉になりません。引きずり込まれました。何というか音楽という媒体が持っている『意味』が消えてしまって、感情の何もかもが混ざり合っているイメージ。
例えるなら、温かいスープの中で段々と身体を溶かされていくような感じでしょうか。しかも恐怖はありません。
気づいたら終わってました。『あ、終わった』というのは頭で分かっているのですが、身じろぎ一つ出来ず頭の奥が溶かされたみたいにじんじんしてました。当時これを聴いていた幸福な聴衆の皆さんが体験された空白の30秒間はこういうことだったのでしょうか。確かにこんな演奏を生で聴かされたら、その後どんな音楽も深い感動を呼ばなくなるかもしれません。そういう意味では『幸福な』といえないのかもしれません。
総括。
凄いってレベルじゃない、この演奏。
1ヶ月前でこうなら、日本公演のNHKホールでの演奏はどんなにエグい演奏だったのでしょうか。想像もつきません。
はっきり言って、今まで出たバーンスタインによる演奏は遥かに凌駕しています。ディティールとしてはACO盤が一番近いのですが、サウンドとしては別物と捉えて差し支えありません。弦が綺麗にまとまりすぎて曲の持つ『生命の泥臭い部分』が表現しきれていないACOの欠点を見事に払拭しています。
『とんでもないCDが出てしまったなぁ』という感じです。この先どんなに凄いマーラーが発売されてもこれを超えることはまずないんじゃないかと思える程です。
もちろんバーンスタインの演奏が全てではないことは分かっています。
『ロマン派最後の交響曲』としてのこの曲を、深遠な響きの総体として描いたカラヤンの演奏。
何処までも透明な響きで、恐らくマーラーが別荘から見ていたであろう朝の澄んだ光のようなアバドの演奏。
また、マーラーの世界を暗闇の中手探りで必死に再現しようとするラトルの演奏。(どちらかというとラトルはバーンスタインと同じ方向を向いているかもしれません)
私が好んで聴いているのはこの三種ですが(考えてみるとどれもBPOだw)、どれもそれぞれの良さがある素晴らしい演奏です。
それでも、バーンスタイン・IPOは別世界にいると断言できます。何故なら、音楽を聴いてここまで放心させられたのは初めてでしたので。。。
『たかがCDで大げさな、生に比べれれるワケ無いだろう』、という意見は最もです。ただ、私が聴いてきた生演奏のマーラー9番よりは余程凄かった。
評論家やレビュアーの皆さんが『精神的・肉体的に余力のある人しか聴けない』というのは私に限って言えば当てはまりました。これから聴く方はなるだけ時間のとれるときに聞いてください。色々やられます(笑
私自身この演奏は日頃気楽に聴けそうにありません。初めて聴く人にもあまり薦められませんね。2枚目か3枚目ならオススメします。
色々怪しいことを書いてしまいましたが、『凄い』『素晴らしい』演奏の中でも最上級にあることは間違いありません。
このCDに関係されている全ての方々に感謝です。
そして今はマーラーと同じ場所にいるレナード・バーンスタインに最大の感謝を。
私がそこに行った時は、是非貴方のマーラー10番を聴かせて欲しいです。。。
テーマ:クラシック - ジャンル:音楽
- 2012/04/13(金) 00:06:33|
- 音楽
-
| トラックバック:0
-
| コメント:0