「すごいことをやっちゃいましたよ。ベッドサイドやテレビ台、オフィスで使うコンセントタップを芸術品のような素晴らしいものにしたんです。3つのコンセント口に加えてUSB急速充電口を3つつけた。コンセントタップはいつもケーブルがごちゃごちゃしてるけれど、シャオミのコンセントタップはそれを解決。それもたった39元で。中国では年に4億個のケーブルタップが販売されていますが、誰もこの問題に真剣に取り組もうとしてこなかったですしね」
先月、シャオミ・テクノロジー(小米科技)の雷軍・董事長兼CEOはメディアを招いた会議の席上でこう語った。具体的に何を言わんとしているのか、この時は外界にはよくわからなかったが、10月10日に開かれたシャオミの記者会見(「ウォーミングアップ」だという)で紹介されたいくつかのスマートデバイスから、それが何を意図するかが見えてきた。
シャオミが発売しているルーターの中国国産SNS「ウェイボー」の公式アカウントによると、シャオミは「リアル・スマートホーム」のオープンベータテストを開始した。これに合わせて、すでに「小蟻」スマートカメラ、「シャオミ」スマートコンセント、「Yeelight」スマート電球、「シャオミ」スマートリモコンセンターという新製品を4つ準備しているらしい。
「小蟻」スマートカメラについては詳細がかなり明らかにされた。この自宅用のネットモニタリングカメラは720Pの高解像度と111度の広角4倍ズームレンズを備え、インタラクティブな音声通信機能もサポートする。自宅の安全モニタリングを狙った製品だ。
「シャオミ」スマートコンセントは、遠隔コントロールと定時オンオフ機能付きのコンセントタップだ。すでに中国の3C認証[訳注:中国の安全性と技術基準認証制度]を取得している。公開された写真を見る限り、サイズはかなり小さく、雷軍董事長がメディア向け記者会見で明かしたとおり、価格は39元(約670円)を予定しているらしい。3つのコンセント口に加えてUSBを使った充電口が3つあり、日常で利用するには十分だ。
「Yeelight」スマート電球と「シャオミ」スマートリモコンセンターについては、詳細情報が明かされていない。しかし、シャオミが口を開かないからといって情報がまったくないわけではない。シャオミが運営する製品ファンコミュニティ「シャオミ社区」には「Yeelight」スマート電球の使用レポートが投稿されている。その写真を見ると、ファンが手に入れた製品と発表された写真はそっくりに見える。
「Yeelight」スマート電球はシャオミの新開発製品ではないようだ。この推測を確かめるべく、「Yeelight」社の創業者、姜兆寧CEOに電話で話を聞いた[訳注:Yeelightは山東省青島のスマート照明メーカー]。
同氏によると、「Yeelight」スマート電球はすでに発売されている、同ブランドのスマートLED電球「Yeelight Sunflower」を原型に作られた製品だという。電球内に白色LEDとフルカラーRGB LEDが内蔵され、1000色以上もの色彩変化を味わえる。さらに、遠隔操作でシーンに合わせた機能をセットすることもできる。ソフトウェア面では、シャオミ・ルーターを使うことでルーター機能を向上させ、同ルーターによるスマートデバイスの集約化に貢献する製品らしい。
同社が生産する「Yeelight Sunflower」はソフトウェアをダウンロードする必要があったが、シャオミ版の「Yeelight」スマート電球はシャオミ・ルーターを通じてコントロールできるようになっている。
姜CEOは、「Yeelight」スマート電球は販売価格で大きく譲歩した製品だと明かす。現在、「Yeelight Sunflower」は大手ネットショップ「タオバオ」や「京東商城」では179元(約3000円)だが、シャオミの「Yeelight」スマート電球は予想を裏切る低価格で、一般的なLED電球とたいして変わらないはずだと語った。製品の形からすると、「Yeelight」スマート電球はフィリップスのLED電球「Hue」の庶民版になるようだ。ただしその価格も「Hue」より低いために導入ハードルも低くてすむ。
なぜそんな大きな譲歩をしてまで低価格を受け入れたのか、と姜CEOに尋ねたら、「シャオミによって膨大な販売量が確保されること、ブランド力向上につながるためだ」と言う。加えてシャオミのユーザー数がたんに多いだけではなく、新たなものにチャレンジしたいという志向を持つ人々という点も魅力になった。こうした条件を考えて、低価格でユーザーを獲得する方向を選んだのだそうだ。もちろん、シャオミが「Yeelight」に出資していることも関係している。
姜CEOと雷董事長の話を総合すると、次のようなことがわかる。シャオミは、シャオミ・ルーターを中心としたスマートデバイス、スマートホームの産業チェーン整備に力を入れている。その売りは低価格。これまで一般庶民には高値の花だったスマートデバイスを、価格的にも導入ハードル的にも、ギークではなく消費者に近づけることが目標になっている。
ホーム製品マーケットにおいて、電灯、カメラ、コンセントの市場は非常に大きい。スマートホームへの製品参入は価格と導入ハードルの高さという障害に直面する。シャオミの控え目なスマートホーム製品参入が、これまで非常に薄っぺらだったスマートホームの産業チェーンがにぎやかになるだろう。すでにシャオミの製品ラインナップはルーター、テレビ、セットトップボックス、コンセント、モニタリングカメラ、LED電球、リモコンセンターと一定の範囲に及んでいる。現時点ではシャオミ・スマートリモコンセンターがどのようなものなのかは不明だが、恐らくこれまでシャオミが参入できなかった大型家電をコントロールするためのものだと思われる。
かつてシャオミ・ルーターに関する分析記事で、私たちは同社の野心を次のように推測したことがある。
「長期的な視点で見れば、シャオミ・ルーターはネット設備の連携をより簡便にする製品となるだろう。現時点ではドキュメントの共有などの初期的な機能しか備えていないが、将来的により多くの機能が開放され、テレビで携帯電話やパソコンのコンテンツを読み込めるようになる。さらには携帯電話で、パソコンやテレビ、ネット接続の電灯や玄関のカギといったネットに接続された機器を制御することも可能になるだろう。つまり、『モノのインターネット』(Internet of Things, IoT)みたいなものになるのではないか」
シャオミは最近、ハイアールやミデア(美的)といった大型家電メーカー、黒物・白物家電メーカー、さらには国家機関との間で、IoTやスマート家電に関する協議を続けていると明かしている。シャオミのプランでは、同社のクラウドサービスの指令に基づき、シャオミ・ルーターとさまざまなスマートホーム製品を連携させ、自動的に一連のアクションを完成させるものになるという。
こうやって見ると、シャオミの足取りはなかなか素早いことがよく分かる。
(執筆:劉学文/ifanr 翻訳:高口康太)
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