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精神障害者に感動体験 星城大リハビリテーション学部 教授 坂井一也さん

医人伝

(2014年10月7日) 【中日新聞】【朝刊】 この記事を印刷する

フットサル普及に奔走 教授 坂井一也さん(50)

画像「スポーツを通じて患者さんにも成長してもらいたい」と話す坂井一也さん

 「精神障害のある人に、スポーツを通して感動体験を味わってもらいたい」。そんな場所をつくろうと、作業療法士でもある坂井一也さんは昨年、愛知県精神障害者スポーツ連盟を設立した。5人制サッカーのフットサルの普及や、大会の開催に奔走している。

 精神障害者スポーツは、これまで一般的に「余暇活動」というとらえ方が強かったが、坂井さんらは競い合う環境づくりを目指す。勝っては喜び、負けては悔しさを仲間と共有。大会での勝利を目標に練習に励めば、家族や周りの人も応援してくれる。「希望があるところに、病気の回復や社会生活の手がかりがある」。真剣にスポーツに励む中で培われた対人関係が、患者を大きく成長させる。

 障害者スポーツ大会との関わりは2002年から。佐賀県の精神障害者バレーボールクラブのコーチや監督を務め、現在も指導を続ける。ある年の全国大会を控えた夏の合宿では、暑さでけが人が続出。弱気が漂い始めたチームに、坂井さんは「アスリートでけがをしない人はいない。自分で判断しろ」と一喝。奮い立った選手らは、けがと闘いながら練習を続けた。医療者ではなく、目標を共にする仲間として出た言葉だった。

 佐賀県鳥栖市の出身。神戸大医療技術短期大学部を卒業後、兵庫県の病院を経て、全開放型病院で精神障害者の入院を受け入れていた「いぬお病院」(鳥栖市)に勤務。地域社会の一員として患者を支え続けた犬尾貞文院長の後ろ姿に学んだ。

 犬尾院長は、病気の自覚がない本人に「なぜ入院が必要か」を納得するまで丸1日かけても説明。近所への迷惑行為があれば、患者本人と一緒に謝罪に出向いた。万引など軽犯罪が起こると、警察に「病気だから罪に問われないのはおかしい」と、通常の手続き通りに取り調べるよう訴え、本人には罪の自覚を求めた。

 「大変なエネルギーが必要だが、犬尾先生はそれで患者さんや地域の人との信頼関係を築いた」。その信頼の絆が患者に社会の一員としての自覚を促し、地域で暮らす支えとなった。

 「病気を治せない場合でも、私たち医療者は患者さんの生活や人生を豊かにできる」と後進の育成で強調する。「自分に何ができるのかと、悩み続けられるプロであってほしい」(林勝)
星城大リハビリテーション学部(愛知県東海市)

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