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ドクイトグモ大量発生、住人を追い出す

ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト 10月20日(月)15時42分配信

 クモが壁の中から這い出すというと、まるでホラー映画のようだが、これはミズーリ州の住宅で実際に起こった事件だ。4000匹を超す毒グモが発生し、住民一家は引っ越しを余儀なくされた。

 なぜクモがこれほど大量発生したのか。同じことはわれわれにも起こり得るのか。ナショナル ジオグラフィックでは、カリフォルニア大学デービス校でクモを研究するジョエル・レドフォード(Joel Ledford)氏に話を聞いた。

◆このような集団発生は、どういった場所で起こりますか?

 私は洞窟に生息するクモを研究しており、同じ属のクモが何百匹も生息しているのを、洞窟でも見たことがあります。

 ドクイトグモ(学名:Loxosceles reclusa)という種は、主に(アメリカ)中西部に分布し、ミズーリ州、アラバマ州、テキサス州の大部分、ルイジアナ州、アーカンソー州などにみられます。ですからミズーリ州のように生息に適した環境の土地では、生息数がかなり多くなることもありえます。

◆これはよくあることですか? クモが1カ所に大量発生する頻度は?

 クモはどこにでもたくさんいます。半径3メートル以内に必ず1匹はクモがいるとも言われます。それほどクモは数が多く、ありふれた生物なのです。都市部でもそれは変わりません。

 ですが、クモは集まって群れを形成したりはしません。大抵のクモはごくひっそりと暮らすのを好みます。

 中には社会性のあるクモも存在し、そのようなクモは数百〜1000匹ほどの小さなコロニーを形成します。

 個人的に、クモが大量発生したことは驚きませんが、壁の外へ出てきたというのは予想外です。この種のクモではあまり考えられません。彼らは巣をかけてそこを居場所にし、あまり遠くへは行かない性質があります。

◆ではなぜこのようなことが起こったと?

 なぜ4000匹のクモが壁の外へ出てきたかですか? そのような状況が発生すること自体、私には想像もできません。きっと非常に特殊なケースだったのでしょう!

 この種のクモは目につくのを嫌い、攻撃性が低く、ただそこにいて有害な昆虫を食べる以外のことはほとんどしません。壁の外へ出てくるなどということは非常に考えにくいのですが、それがオスなら話は別です。

 オスは成熟し、繁殖可能になると、安全な巣から離れて交尾の相手を探しにいきます。今回のことも、それに関係していた可能性がありますね。

◆有毒なドクイトグモが何千匹も発生するというのは、どの程度に危険なことですか?

 ドクイトグモは非常に特殊な毒をもっていて、咬まれるとそこが壊死性の病巣になります。皮膚が溶け出し、壊死して、剥がれ落ちてきます。それはもうひどい有様で、とても笑いごとで済むような話ではありません。

 しかし実際のところ、ドクイトグモはめったに人間を咬まないのです。人間に忍び寄って襲いかかるようなことはしません。

 クモの咬み傷に対して、医師は実際より重く診断し、大げさに扱いがちです。

◆家にクモが大量発生しないかというわれわれの不安をどう思いますか?

 クモは既にわれわれのそばにいます。われわれは常にクモに囲まれて暮らしているのです。しかし、人間をつけ狙うクモはいません。

 クモはあらゆる生態系において非常に重要な位置を占めています。昆虫の数を抑制するのに役立つ存在です。

 どうか恐がらないでください。クモより隣人のほうがよほど危険なくらいですから。

Mollie Bloudoff-Indelicato for National Geographic News

最終更新:10月20日(月)15時42分

ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト

 

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