イングランドは9月と10月のEURO2016予選で3連勝スタートを切った。
3試合での計8得点中5点は、ウェイン・ルーニーとダニー・ウェルベックの2トップが奪ったもの。ロイ・ホジソン監督が新キャプテンに指名したルーニーは、カウンター狙いの敵を攻めあぐねたエストニア戦(1-0)でFKからネットを揺らし、リーダーとしての責任も果たしている。
指揮官がセンターFWとして期待を新たにしているウェルベックは、グループで唯一のライバルと目されるスイスとの初戦(2-0)で2ゴール。故障中だったダニエル・スタリッジの代役としてはもちろん、競争相手としても名乗りを上げた。新たな基本システムは、中盤がダイアモンド型の4-4-2。突破力のあるチャンスメイカー、ラヒーム・スターリングをダイアモンドの頂点で輝かせるためのシステムだ。
だが、新生イングランドの鍵を握る人物を挙げるとすれば、彼ら前線の主役たちではなく、中盤の底を任されるジャック・ウィルシャーになるだろう。
トップ下かボランチか、天職はどこだ。
スイス戦では、ウィルシャーのボランチ起用は国内で物議を醸した。テレビ解説陣の間でも意見は真っ二つ。元代表DFのジェイミー・キャラガーが「ダイアモンドの底辺でも輝きを放てる」と言う一方で、元MFのレイ・パーラー曰く「才能の無駄遣い」という具合だ。パーラー同様にウィルシャーの適所を中盤ではなくトップ下と見る識者には、アーセナルでの育ての親、アーセン・ベンゲル監督も含まれる。
たしかにウィルシャーは、ユースで頭角を現した頃から、巧みなボールコントロールでタイトなスペースを突き抜けるドリブルが大きな魅力だった。攻撃にアクセントを加え、独力でも局面を打破できるチャンスメイカーであることは間違いない。
但し、この特性が中盤の底では諸刃の剣となる。今回の予選3試合でも、最終的には事なきを得たが、ドリブルに失敗して敵のショートカウンターを招く場面が見られた。結果として、メディアでは否定的な意味で「新生イングランドの象徴」と呼ばれている。
強豪不在のグループ予選では問題なくとも、本大会で強敵と対戦すれば守備面の弱点が浮き彫りになるという不安を、ウィルシャーが体現しているからだ。
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