“戦後日本の夢”MRJ、世界で勝てるか? 海外コンサルは懐疑的
国産初旅客ジェット機『MRJ(三菱リージョナルジェット)』が18日、愛知県名古屋空港内にある三菱重工小牧南工場でお披露目された。500人の航空会社役員、政府関係者、その他の来賓が出席して、披露式典が行われた。
製造した三菱航空機によると、MRJは、米プラット・アンド・ホイットニーの最新型エンジンを搭載し、同型機に比べ20%燃費が良いという。また利用者に余裕のある快適な空間を提供できるとしている。
◆夢よふたたび
三菱航空機の親会社、三菱重工業の大宮英明会長は、式典で「国産旅客機の再興は、私の、そして三菱重工業の長年の夢だった」「世界で通用する日本製航空機がついに夢から現実のものになろうとしている」(フィナンシャル・タイムズ紙)と述べた。
航空機の開発は、第二次世界大戦後の日本の国策のひとつだった、と同紙は報じている。
戦後、三菱などの企業は、YS-11型航空機の開発に着手した。YS-11は、国産エンジンを搭載、零戦を作った技術者も開発に加わった。1962年には初飛行にこぎつけた。しかしその後、市場競争に負け開発は尻すぼみ、たった180機余りで製造を終了した。
以降、日本は、航空機部品の多くを海外へ供給する国となった。三菱重工は、他の日本企業と共に、ボーイング787型機の3分の1の機体を製作している(フィナンシャル・タイムズ紙)。
◆強気の三菱、専門家は厳しい予想
三菱航空機は、計407機の受注を既に獲得した、とフィナンシャル・タイムズ紙は報じている。しかし、現在リージョナルジェット市場をほぼ握っているブラジルのエンブラエルやカナダのボンバルディア社に比べれば、僅かな数字だ。
同社は今後20年間で、世界のリージョナルジェット機市場の50%を握ること、5000機の受注を予想するなど、強気だ。
しかし、フォーカスト・インターナショナルの上席航空宇宙アナリスト、レイ・ジャウォロウスキ氏は、「航空会社は、馴染みの購入先を好む。新規参入する企業は、その市場に割って入らなければならず、なかなか困難だ」(フィナンシャル・タイムズ紙)と述べている。
アセンド・フライトグローバルは、2033年までにエンブラエルは2489機、三菱は913機受注を獲得するだろう、と予想している。
また、米航空宇宙コンサルタント、ティール・グループのリチャード・アブラフィア氏も厳しい予想をしている。同氏によると、ブラジルの大手エンブラエルは、経済性、信頼、アフターケアの評判が高く、現時点で1000機以上の受注を先んじている。この状況は三菱にとって苦しいものだ、と指摘した(ロイター)。また、エンブラエルは、エンジンもMRJと同様の新型を搭載したE-jetを、MRJにわずか1年遅れの2018年には、運行開始できる予定だという。
◆技術を次の世代へ
MRJの事業がうまくいけば、航空機産業は再び日本のものづくりの推進力となるかもしれない、とフィナンシャル・タイムズ紙は報じている。
ロイターも、MRJが大きな成功を収めれば、日本の機械部品の競争力を上げることに繋がる、とみている。ボーイングやエアバスなど、日本の技術が今以上にその性能を支えることになるという。ボーイング787型機では、炭素繊維部品の35%を日本企業が製作。約22000人、航空技術者の5分の2は日本人が従事しているそうだ。
YS-11の開発は、尻すぼみで終わったが、三菱重工やその他の関連企業がそこで培った技術は、海外の航空機製造に活かされるなど、第二次世界大戦後の工業界の復興の主力となった。
ある政府関係者はロイターのインタビューで、航空事業を伊勢神宮式年遷宮(20年ごとに行われる建て替え)に例えて、技術の継承こそが重要なのだ、と話したという。
アブラフィア氏は、「リージョナルジェットは、利益と技術開発という点では、それほど重要なものではない。日本にとっては、特にボーイングなど航空機の製造を支えるということの意味が非常に大きいのだ」(ロイター)と述べた。