恥ずかしい話、アイドルに憧れた事があった。ステージでスポットライトを浴びながら、可愛い服を着て、みんなに愛されて、いつも楽しそうに笑ってる女の子たち。私が中学生だった頃、テレビ東京でASAYANというオーディション番組がやっていて、その番組は随分と流行っていた。鈴木亜美やモー娘。などの時代を賑わせたアイドル達がそこから出てきて、まさにアイドルの登竜門と言っても過言ではなかったと思う。
番組のオーディションの中で、どんどん選別され涙ながらに退場していく女の子がいる一方で、身近な存在だったはずの女の子達が、次のステージに進むうちにどんどんアイドルらしくなっていくのを見て、なんだかドキドキしたものだった。ああ、現実はシビアだなっていう反面、アイドルになっていく人達も案外身近なんじゃない? なんてことを思わせてくれる番組だったのだ。
さて、今日マチ子さんによる『5つ数えれば君の夢』は、ステージに立つことを選ばれ夢を叶えた側の女の子のお話。順番に主人公として登場する5人の少女は、高校に通いながらアイドルFive Starsとして活動している。彼女達はステージ上でスポットライトを浴びながら歌ったり踊ったりしつつも、学校の場では普通の日常を過ごして行く。華やかに見える彼女達の現実はなんだかとても切ない。アイドルとしてステージに立つ事を選んだばかりに、友人とわかり合えなかったり、恋を諦めたり、好きな相手と訪れた海で無邪気に走り回りたい思いを抑えて血を滲ませながらヒールを履いたり割とストイックに生きている。今日マチ子さんによって実に上手く女の子の切ない感情が絵柄に醸し出されている。
ステージに立つという夢を叶える人叶えない人の境目ってなんだろうか。大事な局面で他者から選ばれるっていうのにはもちろん容姿とか技術の上手さとか、機転とか、生来の要素が大きく関わるのも間違いない。しかし、作品を読みながら自分自身の個人的な欲望を越えて夢を叶える!という選択をする覚悟が彼女達をステージに立たせて行くのではないか、そんなことを感じた。実際、本作の作者である今日マチ子さんはあとがきでこんな事を書いている。
特別に優れた女の子たちが、
普通の女の子であることを求められること。
逆もまたしかり。
大人の理想、残酷なブレのなかにいて、
それに耐えることができるのは、
彼女たちがひたすら若く、しなやかだから。
反って撥ねて、
夢の中を、
走り抜けることができるのだろうか。
それをただまぶしくみている。
夢を叶えたその先で更に走り続けていく彼女達の状況は時に過酷で誰もが耐えきれるものではないと思う。かくいう私は、彼女達ほどストイックには生きてこなかった。好きなものを好きなだけ食べ、走りたいときは海でもどこでも裸足で走るし、自分の欲望のために目一杯の時間を使って生きてきたような人間である。だからこそ、ステージに立つことなどはなく、彼女達の歌やパフォーマンスを見ることで日々エネルギーをもらっているのである。そんな私のような無数の観客を背負ってステージに立ち続ける彼女達を見届けて行かねばなるまい、読みながらそんな気持ちになる作品だった。
ちなみにFive Starsのモデルとなったのは、東京女子流という小西彩乃、山邊未夢、新井ひとみ、中江友梨、庄司芽生の5人組からなるアイドルユニット。Avex系のグループだけあって、みんな可愛い上に歌もダンスもうまい。飽くまでイメージモデルなので、漫画の中に出てくるエピソードはフィクションの話である。だけど、それぞれのキャラクターを実によく表してる気がして、東京女子流を知ってる人は二重に楽しめるような作品になっている。
また、元々作品と出会ったのは同タイトルの映画『5つ数えれば君の夢』を渋谷の映画館で観たことがきっかけであった。最近、ニューカマーとして映画界を賑わしている山戸結希さんという若手の女性監督の作品なのだが、こちらも漫画とは違った形で東京女子流のキラメキのような何かを余す事なく切り取った叙情的な作品になっている。漫画と映画のストーリーはまた別なので、こちらも併せて観るとより楽しめることでしょう。
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