小野俊一氏インタビュー(5、6)
2014-10-18
《原発放談05》被曝由来の病気は「個発」でなく「群発」(小野俊一) 9/24 鹿砦社
◆被曝由来の病気は「個発」でなく「群発」
── 最近の報道で驚いたのは、福島県立医科大の学長が「甲状腺がんの検診については、国がもっと関与してくれないと万が一、われわれが誤診をした時に国が責任の一端をとってくれないと困る」と発言していたことです(KFB福島放送2014年6月17日)。
甲状腺がん検診については現場の医師の意見も分かれてきています。
「過剰検診ではない派」と「過剰だから検診する必要はない派」に分かれてきた。福島医科大は現場にいるから過剰でないという。
一方で、後者のひとりには渋谷健司=東京大学大学院医学系研究科国際保健政策学教室教授(一般社団法人JIGH代表理事)などがいます。
彼は小和田雅子の妹の夫ですが、福島での甲状腺がん検診に対して、「こんなばかげたことはもう止めろ」と主張しています。
これまで福島医科大は国とべったりで検査をしてきていた。それが最近、医師間でも意見の対立が起こってきて、ややこしくなってきたわけです。
いまのところ福島医科大は甲状腺検診を止める気はまったくない。しかし東京の方では「もうやめろ」という声が高まっている。
足の引っ張り合いが始まっていて、そこにはおそらく国の意向も絡んでいます。
甲状腺がんはICRP(国際放射線防護委員会)が唯一認めざるを得なかった被曝で増える疾病です。
それ以外の病気も被曝で増えるかもしれないが、他の病気は「科学的にはわからない」とICRPは結論した。
ただ、だからといって、被曝で他の病気が増えないという証明にはなりません。
例えば、放射線基礎医学が専門の野村大成大阪大学名誉教授は、被爆で心筋梗塞、子どもの発達障害などが増えるだろうと言っています。
野村先生の説を大雑把に一言で言えば、「ハエやネズミで起こった奇形などの現象は人間でも必ず起こる」ということです。
チェルノブイリ事故の3年後ぐらいに、放射線量が下がった。これで多くの医師はもう重大な被害はないと言って、研究を止めようとした。
しかし、実際は3年後からが病気の本番でした。
だから福島もこれからが危ないと野村先生は警告しています。
野村先生についてはロシアのテレビ局「ボイスオブロシア」で放送された彼のインタビューがとても参考になります。
── 被曝の影響で有意に増加している病気、症状は何でしょう? 著名人の訃報や病気や体調不良も増えていませんか?
ガンが増えているのは確かでしょうし、真偽のほどはわからないけれど、がん保険に入りにくくなったというような話も聞きます。
保険の払い出しが増えたというのも本当でしょう。
井伏鱒二の小説『黒い雨』の中に次のような記述があります。
「『口をあけてごらん』といってあけさせると、門歯はいつの間にか欠けて無くなっているが根はのこっている。
数日前までは、ぐらぐらと根ごと揺れていたにもかかわらず、中途からぽろりと折れたらしい。腫れた歯茎からは絶えず血がにじみ出て、ホウ酸でうがいしたぐらいでは血が止まらない。
口をつぐんでしばらくすると、唇の合わせ目に赤い糸のような細い筋が浮いている」
これを読んでそんなことも起きるのか?と思っていたら、最近、ネットでは芸能人などで歯が欠けたという話が結構出ています。歯自体は折れても根っこは生きているという状態です。
心不全が増えたことについては、東北大学の下川宏明教授(医学系研究科循環器内科学分野)が発表しています。先週の水曜日(6月18日)、下川先生が熊本に講演に来られた時、私も聞きに行きました。
講演の中で下川教授は、心不全の増加はストレスが原因と説明され、そのひとつの理由として、過去の大震災とは地震の種類が違うと言われていました。
つまり、下川教授は地震の揺れ方(直下型、海溝型、津波の有無等)でストレスのかかりかたが違うと主張されていました。(笑)
私は納得できなかったので、「宮城県にも放射能が降りそそぎ、丸森町などでは除染もようやく始まっているのに、心不全が増えた要因のひとつとして放射能を考えていないのはなぜか?」と質問しました。
すると、下川教授は、「被曝線量を測定していないから、要因の一つに挙げることはできない」と答えました。
「測定していない」という理由で無視する手法は「科学的」といえるのか、大いに疑問です。
── 汚染が酷ければ福島で様々な病気が出てきていても不思議ではないように思うのですが、あまりそういう話は聞きません。
個人差が大きいと思います。
それと被曝に強い弱いは遺伝や家系が関係していると思います。
広島の被爆データを見ていると、一人が死ぬというよりも同じ条件の場で4~5人がほぼ同時期に亡くなる。
おそらく福島でもそうした傾向が出てくると思います。
同じ時期に同じ病気で亡くなる方がでてきたら、それは被爆との関連性を考えてもよいと思います。
個発ではなく群発ですね。
3.11後の2011年だったですが、日本のコンサルティング会社に勤める方がうちに来て「どうも頭に一枚もやがかかっている感じがして、それがとれない」と言っていました。
その方はばりばり仕事をしていたコンサルタントです。でも、どうも仕事ができないから九州に移住した。
症状を一言でいえば「アルコールを飲みすぎた翌朝の二日酔い」のような気分とのこと。それで、アルコールを飲むと調子が良くなった気がするそうです。
チェルノブイリでもウォッカ中毒が増えましたよね。あれもアルコールを飲むことによって調子がよくなったと感じていたようです。
人それぞれ濃淡はあるでしょう。しかもこれまで一所懸命仕事をしてきた人、ぎりぎりでやってきた人ほど、普段の健康状態と違う自分の体調不和に気づき安いかもしれません。
私なんかいつもちんたらしているせいか、違いは以前より眠気が増したぐらいです(笑)
── 最近、徹夜ができなくなりました。加齢でしょうか?
歳をとるというのは皆、だれにとっても初めての経験です。
だから、何が自分に起こっているのかよくわからない。
私は3.11の前、40代になってから小さな字が見えにくくなってきた。老眼ですよね。
体調の変化があったとき、多くの人は歳をとったせいかとまず考える。でもその変化には被曝の可能性も混じっているかもしれない。
そのあたりは本当に微妙すぎてわからない。
私はすでに30代を経験しています。50代になって思うと30代には体力、気力がほとんど落ちなかった。
35歳を過ぎて記憶力が落ちましたが、基本的に30代の人は元気です。
しかし、もしこの年代の人たちがだるいとか言い出したら、それは被曝の可能性があると思います。
20代のアイドルでもいまは体調不良で休んだりしていますよね。
われわれ時代のアイドルなんか、休みなんかほとんどなかったでしょう。急遽、出演中止とかほとんどなかったと思います。
でも、最近、若くて元気なアイドルや芸人の中でも体調不良がやけに多い。
喉を悪くする人も増えている感じがします。歌手や声優や俳優にこうした症状が多いのは、息を吸うことが多いからでしょうか。
被曝の識別の症状例の中には咽頭痛があります。喉には気をつけた方がよいと思います。
ただし、これらは統計的にはうまく出せない。
しかも、著名人の体調不良の問題が統計的にも証明できるような事態になった時は本当に終わりで、深刻な事態ということです。
放射能に関するデータ分析では、とにかく屁理屈を言って否定する人がたくさんいます。
人口動態のグラフでも明らかに十年前よりも3.11以後の方が減り方が急激です。
しかし、これは「高齢化が主因だ」といって被曝由来の人口減を一切認めない。
《原発放談06》分断される「原爆」と「原発」(小野俊一)
── 小野先生は奇形生物の画像をよくブログに載せています。最近の新聞記事では「黄身のない卵」(毎日新聞2014年5月05日)とか「双頭のヤモリ」(南日本新聞2014年5月13日)や「透明のおたまじゃくし」(朝日新聞2014年6月11日)などが報じられていますが、実際、被曝で奇形や突然変異は増えているのでしょうか?
奇形はむかしからあったといえばあったし、放射能特有の奇形があるわけでもありません。
ただ、放射能で奇形化の頻度が増える。
双頭の子どもでは米国に成人した双頭の女性がいます。
むかしの中国では唐の時代、玄宗皇帝の寝屋のお供の一人に双頭の女性がいたと記されています。
だから、双頭の人間がいなかったわけではない。
ただ、チェルノブイリではその発生頻度が増えた。
そのことが大きな問題だということです。
私は植物の奇形事例も集めていますが、それらの多くが放射能由来だとはなかなか言いきれない。
ただ、放射能の影響かもしれない発生条件はあります。例えば、壁や塀の近くの植物に奇形が多くなる。
これは雨水に混じった放射能がそのあたりに集まりやすいからかもしれません。熊本でもちらほらあります。
最近はあちこちで通常、普通は実がならないジャガイモに実がなることが増えているようです。
それを見て、40年、50年も農家をされてきた方々が「珍しい」「初めて見た」と言うから、話題になるわけです。
しかし、それが報道されるとネットでは「そんなの珍しくない」と書き込む人が必ず出てくる。
人間の奇形は公にするのは難しいです。
日本の法律では妊娠22週を超えると流産はさせらせられない。
それに医師は奇形が生まれたことを他者には話さないし、お母さんも隠すでしょう。
しかも、奇形児の出産がもし増えてその事実を公けにしても、得する人がいない。お母さんも傷つきますし、へたをすると夫婦間の問題になって離婚なども起きかねない。
あそこで奇形が生まれたという噂が広がれば、それこそ差別につながりかねない。
◆分断される「原爆」と「原発」
私が経験したのは、九州の医師会の内部講演会の時に「被曝で奇形が生まれる」という話をしたら、長崎のある医師が猛烈に反論してきた。
「長崎はいわれなき差別で被害を受けた。放射能で奇形は生まれないということはABCC(原爆傷害調査委員会)の研究で証明されている。なんでお前はそんなウソをつくのか!」と正面から噛みつかれました。
放射能と奇形の因果関係は議論の余地などないと思っていましたから、その時は唖然としました。
その医師の略歴を聞いたところ、彼は長年、長崎で被爆者救済支援されてきた医師でした。
要するに彼は、原爆被爆者は支援するけれども、差別は作りたくないがゆえに、奇形は出てこないと奇形の有無については、ABCCの報告を鵜呑みにし、奇形の話が出ると「原爆で奇形は起きていない」と主張する。
その長崎の医師は五十代で、長年被曝活動に尽力されていた先生でしたから、よほど勉強していないと反論するのは難しい。
自分の活動が政治的だとさえ思っていない。
だから、「放射能では奇形は生まれない」と彼の中では決まっていて、そこは絶対譲れないという考えです。
長崎の被爆者組織の中にもそういう認識の人がかなりいるから、ことは単純ではありません。
しかも被爆者は「当事者」なので、彼らの言葉はたとえウソであろうと社会的に力が強い。
3.11の後に長崎の被爆者の講演会に行ったときです。
そこで被爆者の講演者が何を話していたかといえば、アメリカが原爆を落とした時、ピカッとしてやけどなどで被曝して死んだのは認める。
しかし、内部被曝など爆発後の被害は認めないわけです。
だから、私は質疑の際に挙手をして「爆発後に具合は悪くなかったのですか?」と質問した。すると彼は「爆発後はぜんぜん(体調は)悪くなかった。」「健康だった」と言うわけです。
熊本留学生交流推進会議の企画だったので英語同時通訳がつき、留学生の一人も「奇形児は生まれなかったのか?」と質問しました。すると講演者は「一切生まれなかった」「そんなことがあったら大変なことです」とまで言った。
しかも、3.11の後なのに原発については一言も語らなかった。
その後、私は講演会の事務の方に「原発事故でも被曝します。それも大事じゃないですか?」と意見しました。すると主催者側の人は「我々にも立場があるから、そこには触れません」と言いました。
◆被曝由来の病気は「個発」でなく「群発」
── 最近の報道で驚いたのは、福島県立医科大の学長が「甲状腺がんの検診については、国がもっと関与してくれないと万が一、われわれが誤診をした時に国が責任の一端をとってくれないと困る」と発言していたことです(KFB福島放送2014年6月17日)。
甲状腺がん検診については現場の医師の意見も分かれてきています。
「過剰検診ではない派」と「過剰だから検診する必要はない派」に分かれてきた。福島医科大は現場にいるから過剰でないという。
一方で、後者のひとりには渋谷健司=東京大学大学院医学系研究科国際保健政策学教室教授(一般社団法人JIGH代表理事)などがいます。
彼は小和田雅子の妹の夫ですが、福島での甲状腺がん検診に対して、「こんなばかげたことはもう止めろ」と主張しています。
これまで福島医科大は国とべったりで検査をしてきていた。それが最近、医師間でも意見の対立が起こってきて、ややこしくなってきたわけです。
いまのところ福島医科大は甲状腺検診を止める気はまったくない。しかし東京の方では「もうやめろ」という声が高まっている。
足の引っ張り合いが始まっていて、そこにはおそらく国の意向も絡んでいます。
甲状腺がんはICRP(国際放射線防護委員会)が唯一認めざるを得なかった被曝で増える疾病です。
それ以外の病気も被曝で増えるかもしれないが、他の病気は「科学的にはわからない」とICRPは結論した。
ただ、だからといって、被曝で他の病気が増えないという証明にはなりません。
例えば、放射線基礎医学が専門の野村大成大阪大学名誉教授は、被爆で心筋梗塞、子どもの発達障害などが増えるだろうと言っています。
野村先生の説を大雑把に一言で言えば、「ハエやネズミで起こった奇形などの現象は人間でも必ず起こる」ということです。
チェルノブイリ事故の3年後ぐらいに、放射線量が下がった。これで多くの医師はもう重大な被害はないと言って、研究を止めようとした。
しかし、実際は3年後からが病気の本番でした。
だから福島もこれからが危ないと野村先生は警告しています。
野村先生についてはロシアのテレビ局「ボイスオブロシア」で放送された彼のインタビューがとても参考になります。
── 被曝の影響で有意に増加している病気、症状は何でしょう? 著名人の訃報や病気や体調不良も増えていませんか?
ガンが増えているのは確かでしょうし、真偽のほどはわからないけれど、がん保険に入りにくくなったというような話も聞きます。
保険の払い出しが増えたというのも本当でしょう。
井伏鱒二の小説『黒い雨』の中に次のような記述があります。
「『口をあけてごらん』といってあけさせると、門歯はいつの間にか欠けて無くなっているが根はのこっている。
数日前までは、ぐらぐらと根ごと揺れていたにもかかわらず、中途からぽろりと折れたらしい。腫れた歯茎からは絶えず血がにじみ出て、ホウ酸でうがいしたぐらいでは血が止まらない。
口をつぐんでしばらくすると、唇の合わせ目に赤い糸のような細い筋が浮いている」
これを読んでそんなことも起きるのか?と思っていたら、最近、ネットでは芸能人などで歯が欠けたという話が結構出ています。歯自体は折れても根っこは生きているという状態です。
心不全が増えたことについては、東北大学の下川宏明教授(医学系研究科循環器内科学分野)が発表しています。先週の水曜日(6月18日)、下川先生が熊本に講演に来られた時、私も聞きに行きました。
講演の中で下川教授は、心不全の増加はストレスが原因と説明され、そのひとつの理由として、過去の大震災とは地震の種類が違うと言われていました。
つまり、下川教授は地震の揺れ方(直下型、海溝型、津波の有無等)でストレスのかかりかたが違うと主張されていました。(笑)
私は納得できなかったので、「宮城県にも放射能が降りそそぎ、丸森町などでは除染もようやく始まっているのに、心不全が増えた要因のひとつとして放射能を考えていないのはなぜか?」と質問しました。
すると、下川教授は、「被曝線量を測定していないから、要因の一つに挙げることはできない」と答えました。
「測定していない」という理由で無視する手法は「科学的」といえるのか、大いに疑問です。
── 汚染が酷ければ福島で様々な病気が出てきていても不思議ではないように思うのですが、あまりそういう話は聞きません。
個人差が大きいと思います。
それと被曝に強い弱いは遺伝や家系が関係していると思います。
広島の被爆データを見ていると、一人が死ぬというよりも同じ条件の場で4~5人がほぼ同時期に亡くなる。
おそらく福島でもそうした傾向が出てくると思います。
同じ時期に同じ病気で亡くなる方がでてきたら、それは被爆との関連性を考えてもよいと思います。
個発ではなく群発ですね。
3.11後の2011年だったですが、日本のコンサルティング会社に勤める方がうちに来て「どうも頭に一枚もやがかかっている感じがして、それがとれない」と言っていました。
その方はばりばり仕事をしていたコンサルタントです。でも、どうも仕事ができないから九州に移住した。
症状を一言でいえば「アルコールを飲みすぎた翌朝の二日酔い」のような気分とのこと。それで、アルコールを飲むと調子が良くなった気がするそうです。
チェルノブイリでもウォッカ中毒が増えましたよね。あれもアルコールを飲むことによって調子がよくなったと感じていたようです。
人それぞれ濃淡はあるでしょう。しかもこれまで一所懸命仕事をしてきた人、ぎりぎりでやってきた人ほど、普段の健康状態と違う自分の体調不和に気づき安いかもしれません。
私なんかいつもちんたらしているせいか、違いは以前より眠気が増したぐらいです(笑)
── 最近、徹夜ができなくなりました。加齢でしょうか?
歳をとるというのは皆、だれにとっても初めての経験です。
だから、何が自分に起こっているのかよくわからない。
私は3.11の前、40代になってから小さな字が見えにくくなってきた。老眼ですよね。
体調の変化があったとき、多くの人は歳をとったせいかとまず考える。でもその変化には被曝の可能性も混じっているかもしれない。
そのあたりは本当に微妙すぎてわからない。
私はすでに30代を経験しています。50代になって思うと30代には体力、気力がほとんど落ちなかった。
35歳を過ぎて記憶力が落ちましたが、基本的に30代の人は元気です。
しかし、もしこの年代の人たちがだるいとか言い出したら、それは被曝の可能性があると思います。
20代のアイドルでもいまは体調不良で休んだりしていますよね。
われわれ時代のアイドルなんか、休みなんかほとんどなかったでしょう。急遽、出演中止とかほとんどなかったと思います。
でも、最近、若くて元気なアイドルや芸人の中でも体調不良がやけに多い。
喉を悪くする人も増えている感じがします。歌手や声優や俳優にこうした症状が多いのは、息を吸うことが多いからでしょうか。
被曝の識別の症状例の中には咽頭痛があります。喉には気をつけた方がよいと思います。
ただし、これらは統計的にはうまく出せない。
しかも、著名人の体調不良の問題が統計的にも証明できるような事態になった時は本当に終わりで、深刻な事態ということです。
放射能に関するデータ分析では、とにかく屁理屈を言って否定する人がたくさんいます。
人口動態のグラフでも明らかに十年前よりも3.11以後の方が減り方が急激です。
しかし、これは「高齢化が主因だ」といって被曝由来の人口減を一切認めない。
《原発放談06》分断される「原爆」と「原発」(小野俊一)
── 小野先生は奇形生物の画像をよくブログに載せています。最近の新聞記事では「黄身のない卵」(毎日新聞2014年5月05日)とか「双頭のヤモリ」(南日本新聞2014年5月13日)や「透明のおたまじゃくし」(朝日新聞2014年6月11日)などが報じられていますが、実際、被曝で奇形や突然変異は増えているのでしょうか?
奇形はむかしからあったといえばあったし、放射能特有の奇形があるわけでもありません。
ただ、放射能で奇形化の頻度が増える。
双頭の子どもでは米国に成人した双頭の女性がいます。
むかしの中国では唐の時代、玄宗皇帝の寝屋のお供の一人に双頭の女性がいたと記されています。
だから、双頭の人間がいなかったわけではない。
ただ、チェルノブイリではその発生頻度が増えた。
そのことが大きな問題だということです。
私は植物の奇形事例も集めていますが、それらの多くが放射能由来だとはなかなか言いきれない。
ただ、放射能の影響かもしれない発生条件はあります。例えば、壁や塀の近くの植物に奇形が多くなる。
これは雨水に混じった放射能がそのあたりに集まりやすいからかもしれません。熊本でもちらほらあります。
最近はあちこちで通常、普通は実がならないジャガイモに実がなることが増えているようです。
それを見て、40年、50年も農家をされてきた方々が「珍しい」「初めて見た」と言うから、話題になるわけです。
しかし、それが報道されるとネットでは「そんなの珍しくない」と書き込む人が必ず出てくる。
人間の奇形は公にするのは難しいです。
日本の法律では妊娠22週を超えると流産はさせらせられない。
それに医師は奇形が生まれたことを他者には話さないし、お母さんも隠すでしょう。
しかも、奇形児の出産がもし増えてその事実を公けにしても、得する人がいない。お母さんも傷つきますし、へたをすると夫婦間の問題になって離婚なども起きかねない。
あそこで奇形が生まれたという噂が広がれば、それこそ差別につながりかねない。
◆分断される「原爆」と「原発」
私が経験したのは、九州の医師会の内部講演会の時に「被曝で奇形が生まれる」という話をしたら、長崎のある医師が猛烈に反論してきた。
「長崎はいわれなき差別で被害を受けた。放射能で奇形は生まれないということはABCC(原爆傷害調査委員会)の研究で証明されている。なんでお前はそんなウソをつくのか!」と正面から噛みつかれました。
放射能と奇形の因果関係は議論の余地などないと思っていましたから、その時は唖然としました。
その医師の略歴を聞いたところ、彼は長年、長崎で被爆者救済支援されてきた医師でした。
要するに彼は、原爆被爆者は支援するけれども、差別は作りたくないがゆえに、奇形は出てこないと奇形の有無については、ABCCの報告を鵜呑みにし、奇形の話が出ると「原爆で奇形は起きていない」と主張する。
その長崎の医師は五十代で、長年被曝活動に尽力されていた先生でしたから、よほど勉強していないと反論するのは難しい。
自分の活動が政治的だとさえ思っていない。
だから、「放射能では奇形は生まれない」と彼の中では決まっていて、そこは絶対譲れないという考えです。
長崎の被爆者組織の中にもそういう認識の人がかなりいるから、ことは単純ではありません。
しかも被爆者は「当事者」なので、彼らの言葉はたとえウソであろうと社会的に力が強い。
3.11の後に長崎の被爆者の講演会に行ったときです。
そこで被爆者の講演者が何を話していたかといえば、アメリカが原爆を落とした時、ピカッとしてやけどなどで被曝して死んだのは認める。
しかし、内部被曝など爆発後の被害は認めないわけです。
だから、私は質疑の際に挙手をして「爆発後に具合は悪くなかったのですか?」と質問した。すると彼は「爆発後はぜんぜん(体調は)悪くなかった。」「健康だった」と言うわけです。
熊本留学生交流推進会議の企画だったので英語同時通訳がつき、留学生の一人も「奇形児は生まれなかったのか?」と質問しました。すると講演者は「一切生まれなかった」「そんなことがあったら大変なことです」とまで言った。
しかも、3.11の後なのに原発については一言も語らなかった。
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