佐々木俊尚「ブレイクスルーな人たち」
2014年10月19日(日) 佐々木 俊尚

nanapi古川健介【第3回】「お金も大事だけど、世界平和のほうが重要だなと思ってやっています」

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佐々木俊尚氏と古川健介氏
KDDIにHow toサイト「nanapi」を売却した(10月16日発表)ことで話題となっている株式会社nanapi代表取締役の古川健介氏。nanapiをUU(ユニークユーザー)月間2500万人までに育て上げ、海外向け情報サイト「IGNITION」やQ&Aアプリ「アンサー」を次々にリリースし、常に新しいアイデアを世に問うている。ジャーナリスト・佐々木俊尚氏がnanapiの目指す場所、海外進出、Web2.0、そして古川氏ならではのコンテンツ論について切り込んだ(8月18日収録)。<構成/田中裕子>

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萌えでもアニメでもなく、日本の生活文化を海外へ

古川 これから翻訳記事は増えていくと思います。というのも、世界から持ってこないといいコンテンツを発信できないからです。

佐々木 英語の記事を読んでいると、「なんて豊かな世界があるんだ!」と感じますよね。面白い話がいっぱいある。

古川 レベルとボリュームがまったく違います。楽天が無料通話&メッセージアプリのViberを買収したとき、英語では価格の妥当性などの検証記事はたくさん出てきたんですよ。でも、日本語だとそういうコンテンツが全然ない。事実のみを伝えるフラッシュニュースしか流していないんです。

佐々木 濃い記事を書く余力がないんですよね。

古川 日本語と英語だと、潜在ユーザーがおよそ20倍違います。たとえばnanapiは1PVおよそ0.5円で、wikiHowというオーストラリアのHow toサイトは2円。つまり、理論上80倍の市場があることになります。こういうデータを見ると、日本語だけで勝負しても勝ち目はないなあ、と感じます。

佐々木 ということで、nanapiはグローバルメディアであるIGNITIONに力を入れていくんですか?

古川 あらゆる言語に翻訳されても耐えうるコンテンツを作る、というイメージですね。コンテンツの元となる取材はしっかり時間をかけて作り、それを翻訳して世界に発信する。取材に多少コストがかかっても、20億、30億ユーザーになったときにもきちんと成り立つようなコンテンツを作るんです。ヨーロッパでも、母国語ではなく英語で書いて世界中からユーザーを集める、という流れがあるそうですよ。

佐々木 優秀な記者に優良な記事を書かせて、それを英語に翻訳して輸出する、と。

古川 そうですね。

佐々木 ハフィントンポスト日本版立ち上げのころ、アリアナ・ハフィントンさんが「英語の記事を日本語にするのはもちろん、海外の人は日本の記事も読みたがっている。私たちは日本のライフスタイルに興味があるんだ」と言っていたんです。僕は、「本当のクールジャパンは萌えじゃなくてライフスタイルだ」とずっと前から言っているんですよ。「なんで日本のコンビニのお菓子はあんなに美味しいの?」とか「無印良品の製品はなんであんなにミニマルでかっこいいの?」という。

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