日本経済の現状をシビアに分析している良記事です。
日銀の異次元緩和は全く効果を上げていない:日経ビジネスオンライン
勝手にグラフを補足してみます。
普通の人は、日銀が異次元緩和をやるというと、お札を刷りまくって、世の中のお札が増えてじゃぶじゃぶになっていると思っている節がありますが、それは誤解で、実際にはそんなことは起きていない。日銀は何をやっているのかというと、銀行から国債を買い上げて、その代金を各銀行が日銀に持っている当座預金口座に振り込んでいるだけ。当座預金口座の残高が増えているだけです。
各銀行にしてみたら使い道がないから、ただそれをデッドストックみたいな形で日銀の口座預金に貯めているだけ。
量的・質的金融緩和は、日銀当座預金のデッドストック(ブタ積み)には金融緩和効果(予想インフレ率引き上げ→実質金利低下)があるとする「理論」に立脚しています。*1
空前の規模のブタ積みですが、インフレ率は円安効果で説明できる範囲の上昇にとどまっています。*2
「第二の矢」もスローダウンしています。
米経済学者のジョセフ・スティグリッツ氏も、米国では所得(インフレ調整済み)の中央値が4半世紀前の1989年よりも低く、男性労働者に限れば、40年前に比べても低く、こうしたいわゆる中間層が圧縮され、疲弊していることが米国経済の健全性低下の根底にあると様々なところで指摘しています。
アメリカでは、フルタイム労働者に限っても、男は34年前と実質で同額です。この状況で「豊かな暮らし」を実現するには、借金に頼るしかありません。
2002年1月を底に2007年2月まで73カ月続いたいざなみ景気は、好景気としては戦後最長を記録したわけですが、景気回復局面にありながら賃金の伸びは停滞、もしくは低下しました。こんなことが起きたのは日本では戦後初めての事態だったわけです。
大きなフレームワークで日本の将来を見ると、人口が減っていく。しかも、ただ減るのではなく、老人が増えていく。働く人たちが減っていく。
そもそも、こういう状況の中で経済がどんどん成長することを前提に物事を考えていくのがいいのか――。
労働力人口は減少するだけでなくロートル化していきます。経済は実質1%成長できれば御の字で、2%成長は夢物語となるでしょう(トレンドの話)。
限りなく「詰み」に近い状態に追い込まれているように思えます。
トッドが指摘するように、出生率引き上げ(→人口の若返り)を最優先目標に切り替えなければ、大変な事態が避けれられないでしょう。
日本人は少子高齢化という衰退を楽しんでいるのか:日経ビジネスオンライン
長い歴史を見ても、出生率が日本にとって、唯一の重要事項だ。その他のことはすべて、許容できる。
日本でも明治維新と同じくらいの革命的な政策をとるべきだろう。
そろそろ、「マネタリーベースを増やしてインフレにすればOK」という幻想から覚めて、現実を直視する時期ではないでしょうか。
少なくとも現実をまず、正しく認識する――。何よりもそれが不可欠であることだけは確かです。
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