もはや、アフリカの話ではない。欧米の先進国でも感染の広がりが現実味を増してきた。

 スペインと米国で、エボラ出血熱患者の治療にあたった看護師らへの二次感染がわかった。スペインでは一時、看護師搬送での「3次感染」も疑われた。

 不穏な情勢ではあるが、やがて感染が大陸を超えて伝わる事態は考えられたことであり、浮足立つ必要はない。冷静かつ着実に対策を強めるべきだ。

 日本にも、どんな経路で入ってくるかわからない。日本政府は、国内での備えを早急に固めるとともに、流行地での対策拡充をめざす国際行動に積極参加しなければならない。

 世界保健機関(WHO)の報告では、今回これまで疑い例も含め9216人が感染し、うち4555人が死亡している。

 患者の発生はリベリアなど西アフリカの国々に、スペインと米国が加わり7カ国に増えた。最も深刻なリベリアでは患者の数の把握さえ難しいという。

 欧米で二次感染が確認されたことで、「先進国で、厳重な防護服を着ていても防げないのか」との不安も出ている。

 必ずしも正しい解釈とはいえない。同じ患者の治療にあたった関係者は多く、そのなかで例外的に感染したにすぎない。

 国際組織「国境なき医師団」によると、流行地の医療従事者の感染の90%以上は防護服の着脱が手順通りでなかったり、防護服が不適切だったりしたミスが原因という。米国でも同様の失敗が取りざたされている。

 日本でも指定医療機関の関係者向け研修や訓練が始まった。スペインや米国から詳しい情報を得て万全を期したい。

 潜伏期間が長いので入国時の検疫は効果が限られる。だが、入国後の体調悪化への対処法を正しく伝え、国内での感染リスクを抑えることが重要だ。

 国内ではエボラウイルスの検査や研究ができる「BSL4」級の施設が動いていない。早急に整備すべきではないか。

 一方、流行国への支援も待ったなしだ。リベリアなどでは隔離治療施設が足りず、感染拡大を防げずにいる。安倍首相は9月に国連の会合で4千万ドル(約42億円)の追加支援や専門家の派遣を表明した。国際機関と連携して具体化を急いでほしい。

 エボラとの闘いは、負け続きではない。セネガルとナイジェリアでは約6週間、新たな患者の発生が途絶えている。

 各国とも、渡航制限などで国の扉を閉めるような政策に走るのではなく、科学的で地道な対策を積み重ねることが大切だ。