姉と弟【完】

 もうすぐ母さんが帰ってくる時間の筈だ。そうすれば……。
 そんな私の考えを見透かしたように、弟は軽やかに笑う。


「母さん達は今日帰ってこないよ」

「…………っ」


 そうだ。そう言えば今日から母さんと父さんは温泉旅行に行くと言っていた。
 どうしようもない事態に、涙が滲む。

 弟の細い指がそれなりの胸に触れた。


「どこ触って……ぅっ……」


 何だか分からないけれど、背筋がぞくぞくして耐えられない。
 膝が震えて座り込んでしまいそうになる。

 それに気付いたのか、弟の足が太ももの間にあてがわれる。
 次の瞬間力が抜けて、自分で立てなくなり彼の足に体重を預けてしまった。

 重くないのだろうか、と場違いな考えが頭を過ぎった。

 そうして首筋に広がった甘い痺れに、浅く息を吐く。


「やめ……」

「やめない」


 そうしている間に、弟は私のシャツのボタンを全て外していた。
 いつもシャツの下はブラしか付けていないため、ひんやりとした冷気に晒されて体が震える。


「まぁ、貰っちゃったもの勝ちだよね」


 これは、姉に対する態度じゃない。
 明らかに、ことに及ぼうとしている。

 その事実に焦って、止めようとすると弟の綺麗な目と目が合った。

 そこで私は、自分の勘違いに気づく。
 そういて、これがどうしようもないことも悟った。

 何故なら、私を見つめる弟の目は。



――完全に捕食者の目だったから。



「覚悟、してね?」


 そう言うと、酷く楽し気に、そいつは笑った。



End.



□■□


 ……魔が差したとしか言いようがない。

 因みに、その後お姉ちゃんは美味しく頂かれたようです。
 お姉ちゃんは押しに弱いタイプ。弟くんは主人公にだけヤンデレになるタイプですね。外では完璧に猫を被ってます。

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