姉と弟【完】



「じゃあ、代わりに……お仕置き」


 そう言った弟はいつの間にか目の前にいた。
 焦って離れようとするも壁に押し付けられて、身動きがとれない。

 ついでに言えば力が強い。
 いつからだ。今までは負けたことなんて無かったのに。


「……っ。近い近い近い」


 端整な顔が、息のかかるところまで近づいていて、動揺する。
 顔を押しのけようとすると、その手さえ壁に押し付けられてしまった。

 弟は、笑っていなかった。表情をどこまでも削ぎ落とした顔で、私を見つめる。


「……言葉だけじゃ分からないものだよね」


 そう言った弟は、私の後頭部に手を置いて、私に口づけを落とす。


「……?! ちょ……な……」


 私の、ファーストキスが……。
 いや、家族だからノーカウントか? だよね? そうじゃなかったら私は泣く。


「だから、行動で示そうと思って。姉さんが悪いんだよ? 俺以外の人を見るから」


 そして、弟はもう一度私にキスを落とした。それは角度を変えて、ちゅっちゅと執拗に私の唇を奪う。やがて状況に頭がついていかない私を置いて、唇を割って舌が入り込んだ。

 独特の水音が響いて、耳を塞ぎたい程の恥ずかしさに駆られる。

 けれども、同時に快楽の波が押し寄せて来て、信じられない程に甘い声が私の口から漏れた。
 そして、意識がぼんやりとしていく。

 拒否したいのだけれど、出来ないもどかしさが、悔しい。


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