裁判員制度:福島地裁「苦役禁じる憲法に違反」訴え退ける
毎日新聞 2014年09月30日 11時48分(最終更新 09月30日 12時58分)
青木さんは判決後の記者会見で、「病気になっても裁判員制度に参加したら我慢しろということですね」と憤りをあらわにした。【栗田慎一、宮崎稔樹、喜浦遊】
◇国民の義務による障害発症の事実は重い
行政、司法、立法の三権が積極的に導入した裁判員制度について、福島地裁は30日、改めて「合憲」と認定した。「制度は合憲」との最高裁判例に沿った司法判断といえる。だが、国民の義務により一般市民がストレス障害を発症したという事実は重い。関係者は制度の改善を急ぐべきだ。
訴訟で、被告の国は最高裁判例を前面に出して請求棄却を求め、原告本人への反対尋問も行わず、裁判官が反論を促しても応じなかった。一方、裁判官は原告に「なぜ(裁判員を)断らなかったのか」「審理中に具合が悪くなった時、なぜ続けられないと言わなかったか」と問うなど、実態に迫ろうとした。
原告は「私が断れる理由が(辞退理由を示した最高裁のパンフレットに)なかった」「ぼろぼろになっても任務を果たさなくちゃと思った」などと証言した。地裁は「原告が真摯(しんし)に職務を遂行しようとしたため、重い負担を強いられた」と認定したが、制度上の問題とまでは認めなかった。
日本では司法への市民参加は始まったばかりだ。国民の協力なくしては成り立たない制度で被害者が出ている以上、現状を放置することは許されないだろう。国民の義務によって人生が暗転するようなことは二度とあってはならない。【栗田慎一】