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普及に「影の立役者」=「青色」支える蛍光体―LED照明・液晶に不可欠

時事通信 10月18日(土)20時1分配信

 青色発光ダイオード(LED)の開発で、赤崎勇名城大教授(85)ら日本人3氏に贈られる今年のノーベル物理学賞。「21世紀はLEDが照らす」。選考委員会は青色LEDで実現した省エネルギーの白色光源を高く評価したが、LED電球や液晶テレビのバックライトなどが爆発的に普及した背景には、影の立役者とでも言うべきもう一つの欠かせない技術、「蛍光体」の存在があった。
 ◇大きな「誤解」
 青色LEDを語る上で、まず引き合いに出されるのが光の三原色。1960年代に赤、次に緑のLEDが実現したが、あらゆる色を表現するには最後に残った青が必要。開発は困難を極め、「20世紀中は不可能」と言われた―という物語だ。
 だが、現在普及しているLED電球や液晶テレビに使われているのは、実は青色LEDだけ。3色とも使うとそれぞれの発光を制御する必要が生じ、コストが高くなる。
 ではなぜ、青色LEDだけで全ての色を表現できるのか。その鍵が蛍光体だ。セラミックに特定の元素を混ぜた蛍光体は、LEDの光を吸収して波長の異なる光を放つ。
 3氏のうち中村修二教授(60)が所属していた日亜化学工業は1996年、青色LEDに黄色の蛍光体を組み合わせ、白く光るLEDを製品化した。しかし自然な照明には赤や緑も必要で、黄色だけでは限界があった。色の再現性が求められる液晶テレビでも、青色LEDの実現によって逆に赤や緑を出せる蛍光体が求められた。
 ◇エンジン素材から
 物質・材料研究機構(茨城県つくば市)の広崎尚登ユニット長は、もともとエンジンなどの部材に使われるセラミック「サイアロン」を研究していた。90年代後半に青色LEDが登場すると、蛍光体の素材としての可能性を模索。2003年、青色LEDの光から赤い光を発する蛍光体を開発した。
 学会で発表したが「反応はいまひとつ」。電機メーカーなどの協力で改良を重ね、緑色の蛍光体も開発した。08年ごろから商品化が進み、温かみのある電球色など従来の照明と違和感のないLED電球を実現、一気に普及した。今では日本製のLED電球や液晶テレビのほとんどに広崎さんらの蛍光体が使われ、物材機構に入る年間の特許収入5億円の大半を占めるという。
 「青色LEDはいつかノーベル賞を取ると思っていた。近い分野から出るのは本当にうれしい」と広崎さん。「授賞理由の中に『広く普及した』とあるが、そこには蛍光体の貢献がある。LED電球が出す光の多くは、蛍光体からの光だと知ってもらえるとうれしい」と笑顔を見せた。 

最終更新:10月18日(土)20時4分

時事通信

 

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