拍手お礼夢−幸村




「じゃあね」














目の前の彼女は、困った顔をして繋がれた掌を見つめるばかり。

だってしょうがないじゃないか、行かせたくないんだから。

行かせたくなくてしょうがないんだから。


この手が、この俺の手が

彼女を離したくないって、そう判断したんだ。

どうして抗う必要がある。




ギュッと彼女の手を掴んで離さない俺の掌をみて、

「精市」

小さな声で呟いて

「行かなきゃ」

残酷な、真実を



「ね?」





そんな目で、みないで。








だってそうだろう?


笑っちゃうだろ?


何も言わずに自分の主張通そうなんて、子どもみたいだろう?







でも、離したくないんだ。


ずっと、そばにいてほしいんだ。


彼女の体温を感じてないと、不安で不安で仕方がないんだ。










俺は、彼女の頬に手を添えて

静かに唇をふれさせた。

ぴくっと震える彼女の挙動が愛おしくてどうしようもない。

親指でそっと彼女の頬をなぞって、目を閉じる彼女のおでこに口づけを。




「ねぇ、あのさ…」





そっと耳元で囁くと、彼女は頬を染め

仕方がないなと言わんばかりに肩をすくめる。








「いいだろ?」










子供みたいだろ?

でも、それでもいいんだ。

それでもいいから、


俺は











「いってらっしゃい。」










これからも、ずっとずっと


彼女だけが好きなんだって、そう思えるんだ。
















終





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