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【超々特急リニア着工へ(1)】塩漬け40年超…「自腹9兆円」で“我田引水”と決別

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【超々特急リニア着工へ(1)】
塩漬け40年超…「自腹9兆円」で“我田引水”と決別

リニア実験センターで公開された新型車両L0系=9月22日、山梨県都留市

 「計画から建設の段階に移る大きな節目。身の引き締まる思いだ」

 17日、JR東海の柘植康英(つげ・こうえい)社長は、東京・霞が関で太田昭宏国土交通相からリニア中央新幹線の着工の認可書を受け取った後、報道関係者にこう話した。 

 平成19年12月25日、JR東海が全額自己負担によるリニア建設を表明して約7年。夢の超特急計画は今後、設計や測量を経て着工する。

 新幹線に代わる次世代の大動脈計画は長年、塩漬け状態が続いていた。潮目を変えたのは、JR東海の自力建設への方針転換だ。会長として投資を決断した葛西敬之名誉会長は「国が資金を出す情勢ではなく、状況を変えるには民間企業とはいえ自己資金しかなかった」と語る。

 だが、市場の反応は歓迎とはほど遠いものだった。巨額投資で財務体質が悪化するとの懸念から翌日の東京株式市場でJR東海の株式に売り注文が殺到、1日で株価が約1割も落ちた。東京-大阪間の全線開業にかかる建設費が総額9兆円超。その時点のJR東海の連結営業利益は4千億円程度で、その20年分以上の額を一企業が背負うことになる。ドル箱路線の東海道新幹線を抱えていても経営への影響は大きいとみるのは当然だった。

 ただ、葛西氏は「目の前の景色に一喜一憂するようでは鉄道会社の経営者に向かない」と、その様子を冷静に見つめていた。東海道新幹線の輸送力は限界に近づき、これ以上大幅なスピードアップや輸送力の増強は望めなかった。昭和62年の民営化から20年の節目の決断に迷いはなかった。

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