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ヒマラヤで吹雪と雪崩、死者20人超す

ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト 10月17日(金)18時11分配信

 ネパールのヒマラヤ山脈で突如発生した吹雪と雪崩により、トレッキングコースにいた20人以上が死亡したと発表された。安否不明者はさらに多数に上っている。

 米国東部標準時16日午前11時30分更新。この記事は進行中の事故を扱っており、新たな情報が入り次第更新される。

 ネパール政府は15日、ヒマラヤ山脈の人気トレッキング地域で暴風雪と雪崩が発生し、ハイカー、ガイド、牧畜業者らが死亡したと発表した。発生から数日が経った現在、少なくとも23人の死亡が確認されているほか、多くの人が安否不明のままとなっている。

 身動きが取れなくなったり負傷したりしたトレッキング客の救助活動が降雪で難航したため、死傷者数の報告は錯綜した。ネパール観光省は、16日までに外国人18人を含む23人の遺体を収容したと発表した。

 ネパールの首都カトマンズを拠点とするガイド兼登山用品商ジバン・ギミレ(Jiban Ghimire)氏によると、死者数が12人超と最も多かったのはネパールのトロンパスとみられる。「アンナプルナ・サーキット」と呼ばれる一周コースの中で最も標高の高い、5416メートルの峠だ。

 ギミレ氏は16日、電子メールでの取材に応じ、少なくとも250人が吹雪の発生前に警察の検問所で入山届を出していたと話した。「多くの人が立ち往生しているに違いない。今日は事態の成り行きを見守るしかない」。

 アンナプルナ・サーキットは気軽なハイカーたちに人気のコースで、10月は例年天候が穏やかなため、大勢の人が訪れる。

 ネパール観光省は、「今後、ヘリコプターと救助隊員をさらに投入し、被害地域での捜索救難活動を強化する」と発表している。

◆「易しい」コースで天候急変

 今回の雪崩の6カ月前には、世界最高峰のエベレスト(8848メートル)で雪崩が発生し、シェルパ13人を含む山岳労働者16人が亡くなっている。この山で働く人々は、峻険なエベレストに挑む顧客の援助を担い、高い報酬を得ていた。エベレストを目指すのは、普通は高山の経験が豊富な登山家たちだ。

 一方、エベレストの西およそ320キロに位置するアンナプルナ・サーキットになると難易度はぐっと下がり、さまざまなレベルの観光客が世界中からやってくる。

 カリフォルニア州オリンピックバレーに拠点を置く「アルペングロー・エクスペディションズ」の経営者で筆頭ガイドのエイドリアン・バリンジャー(Adrian Ballinger)氏は、「アンナプルナ・サーキットのようなルートであれば、トレッキング客の多くは登山の経験が全くない人たちだろう。今回遭難したハイカーたちも、アウトドアの経験があまりなかったのでは」と話す。

 バリンジャー氏によれば、241キロに及ぶこの周回コースは通常なら秋の間好天に恵まれ、降雪は比較的少ないという。「だが天気が荒れると、たちまち厳しい高山と同じ状態になる。本格的な登山に様変わりしてしまう」。

◆予期せぬ雪崩

 14日、アンナプルナ一帯は予期せぬ大雪に見舞われた。

「突然の雪は突然の雪崩をもたらす」と話すのは、モンタナ州ボーズマンにあるアメリカ林野局・国立雪崩センターのカール・バークランド(Karl Birkeland)氏だ。「どんな場合でも、風に乗るような雪が大量に降ったときには雪崩の危険が大きくなる」。

 ギミレ氏はネパール観光省の報告として、ダウラギリ(標高世界第7位)の麓にあるベースキャンプを襲った雪崩が今回の嵐のうちで最も被害が大きく、スロバキア人登山者5人とネパール人ガイド3人が命を落としたと述べた。

 バリンジャー氏は、「この地域では天気予報の入手が難しいため、ハイカーたちは荒天に備えていなかったのかもしれない」と指摘した。

 今回の吹雪は、今週初めにサイクロン「フッドフッド」の余波がネパールとインドにもたらした豪雨に続くものだった。このサイクロンでは少なくとも8人が死亡し、海岸付近に住む40万人以上が避難を余儀なくされた。

Dan Vergano, National Geographic

最終更新:10月17日(金)18時11分

ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト

 

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