原発廃炉要請:巨額損失、決断の重し 政府が後押し検討
毎日新聞 2014年10月17日 22時03分
小渕優子経済産業相は17日、運転開始から40年超を迎える関西電力美浜原発1、2号機(福井県)など原発7基について、廃炉の早期決断を事実上求めた。電力各社は年内にも運転延長か廃炉かの判断を迫られることになるが、巨額の損失が発生する廃炉の決断に踏み切れないでいる。政府は電力会社の財務悪化を緩和できるように会計制度を変更し、電力各社の廃炉の決断を後押ししたい考えだ。
運転開始から40年超を迎える原発の運転期間は2016年7月までに限定されている。原子力規制委員会の審査をクリアすれば最大20年の運転延長が認められるが、15年7月までに運転延長を申請する必要がある。
15年7月に申請期限を迎えるのは、美浜1、2号機▽関電高浜1、2号機(福井県)▽中国電力島根1号機(島根県)▽九州電力玄海1号機(佐賀県)▽日本原電敦賀1号機(福井県)。ただ、運転延長は容易ではない。
これまで電力各社は13原発20基の再稼働を原子力規制委に申請したが、審査基準をクリアするための対策工事費は1基当たり1000億円規模。老朽原発を運転延長する場合の安全対策費はさらに増加するとみられ、運転延長をしてもコストを回収できず、損失となる可能性がある。
このため、日本原電を除く電力3社はすでに廃炉を検討することを表明していた。しかし、廃炉を正式に決断することも簡単ではない。
廃炉を選択した場合、原発や核燃料の資産価値がなくなるため、巨額の損失が発生する。原発停止で経営が悪化している電力各社にとっては負担が重い。さらに16年の電力小売り全面自由化で電力会社は厳しい競争にさらされる。電事連の八木誠会長(関西電力社長)は17日の記者会見で、廃炉の決断ができるように「財務面のリスクをできるだけ合理的な範囲にしてほしい」と述べた。
経産省は、廃炉により電力会社の財務が一気に悪化しないように、損失を複数年に分けて電気料金に上乗せできる会計制度を導入することを検討している。だが、料金に転嫁する形での廃炉支援には利用者の反発が予想され、政府は難しい判断を迫られる。【中井正裕、浜中慎哉】